29−全部知ってるはずなのに。 ページ29
「どうすんの？」
「え？」
「Aちゃんだよ」
「あぁ、Aか…」
教室に向かう途中、まだ半分以上も残っているペットボトルの水を揺らしながら、しうちゃんがそう聞いてきた。
どうすんの？って言われたって、そんなの俺だってわからない。
嬉しいときや恥ずかしいときに目を背けて下唇を噛む癖も、
ふとした時に見せる楽しそうに笑った顔に、昔のあどけなさが残っているところも、
昔から一緒にいるAのことは全部知っているはずなのに、ジョンインと一緒にいるAは、俺の知らないAに見えてしまうときがある。
これが嫉妬ってことに気付いたのはいつからだっけ、なんて頭の中に考えを張り巡らしているうちに、はぁ…と、いつの間にか溜め息が出ていた。
幼馴染みほど近くて、幼馴染みほど遠いものなんて、他にはないだろう。
いつまで経っても、“幼馴染み”という型から抜け出せないんだから。
「おーい、ルハン。」
「え？」
横から突然聞こえてきたその声にびっくりして、肩が小さく跳ねた。
「え？じゃねーよ。ぼーっとしてたぞ。」
そう言いながら俺の(ぼーっとしているらしい)表情を真似して、あはは！と笑うしうちゃん。
そのしうちゃんの表情があまりに面白くて俺も思わず笑っていると、「ルハン」と呼ばれたと同時に右手がひんやりとした感覚に襲われた。
驚いて右手を見てみると、しうちゃんが俺の右手を取って、その手のひらの上に無理矢理に水の入ったペットボトルを乗せていた。
「え？ペットボトル？」
「いらないって言ったけどさ、飲みなって。」
「…」
しうちゃんのその言葉に、黙って手のひらに乗せられたペットボトルを見つめる。
外の暑さに触れていくつもの水滴がついたペットボトル。
持つと、その水滴が下に流れるのと同時に手のひらを伝っていった。
まだ飲むなんて一言も言っていないのに、「あ、全部は飲むなよ〜」と陽気なしうちゃんの声が聞こえる。
元気出せよ、ということなのだろうか。
「ありがとう」と呟いて蓋を開ける。
ごくりと流し込んだ少しだけ温くなった水が、喉に染みた。
30−白と黒と、好きとスキ。→←28−虚しく落ちた手と、抱き寄せる手。
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ちゅちゅ - こりゃやべぇ (2014年8月16日 18時) (
レス) id: 9899225133 (このIDを非表示/違反報告)
alim(プロフ) - MINMINさん» 毎日1話だけの更新で、どれくらい読者様に楽しんでいただけるのか。それを課題に、キュンキュンしてもらいたい気持ちで書いてました。MINMINさんのコメントを読むとじっくりと読んでくれていることが伝わってきて、本当に励みになりました！ありがとうございました！ (2014年7月3日 11時) (レス) id: 5fc8305436 (このIDを非表示/違反報告)
alim(プロフ) - 慧さん» コメントありがとうございます！たくさんキュンキュンしてほしいなぁと思いながら書いてる作品なので、そう言ってもらえて嬉しいです♪ (2014年7月3日 11時) (レス) id: 5fc8305436 (このIDを非表示/違反報告)
MINMIN - 更新ありがとうございます!!私の中でこのお話はﾎﾝﾄにｵｱｼｽで､忙しい日も忙しくない日も同じﾃﾝｼｮﾝにしてくれて､優しく懐かしい気持ちにしてくれて､また次の日の更新が楽しみになる､そんなお話です｡毎日毎日､続きを楽しみにしています (2014年7月2日 16時) (携帯から) (レス) id: b5090dbdaa (このIDを非表示/違反報告)
慧(プロフ) - きゅんきゅんしてますよぉ。 (2014年7月2日 0時) (レス) id: b16b47566a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：alim/セン
x他1人 | 作成日時：2014年5月23日 18時
