第28話 ページ29
…
店員さんは奥に入ってしまったので、会話する相手がいない
俺は手持ち無沙汰で、ほぼ無意識に服の裾をなぞった
そう、それは腕組をするぐらいの感覚だった
あー、ここのデザイン面白いなーとか思いながら縫い目をなぞる
多分これも、どっかのブランド物だろうなァ……って
あ、
なんだこれ
布地の感触の中で唯一浮いている冷たい表面
異物感を感じてちょっと引っ張ってみると、何かが剥がれる音がした
Oh……
これはもしかして弁償物か？と思ったのも束の間で
その正体を見た俺は、目を見開く事になる
(何この可愛いシール)
それは、弁償とか全く関係ないごくありふれたシールだった
百均に売ってそうな幼児用の丸いヤツだ
中でにっこり微笑むうさぎさんと目が合う
あれ、そう言えばこれ俺の着てる服に付いてたよな……
…
俺もしかして、ずっとこれ服に付けてたの？？？
え、鈴木邸出てから結構街中歩いたよね？？？
誰も何も言ってくれなかったんだけど？？？
ひどいわー米花町民、なんて現実逃避する
ていうか、それ以外にこの恥ずかしさを緩和する方法が無い
穴があったら埋まりたいとはこの事か
半目になりながらそのシールを睨んでいると
ふと、その縁が僅かにズレている事に気付いた
俺は本能のままに、それを捲る
仕方が無いだろ
人間、剥がれそうなやつは片っ端から剥がさないと苛々するように作られているんだ
それに、
それに、それが盗聴器だったとか誰が予測出来ただろうか
あ、これ絶対コナン君のだよね
ボク知ってるよ、この盗聴器のせいで風見さん“それ公”されてたもん
あと気になる怪しいヤツらにも付けたりしてたもん
知ってるもんもん
…
ん……？
ちょっと待てよ……
てことは俺、
…
疑われてるのか？(名推理)
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作者名：＿名前を変える必要がある | 作成日時：2019年6月23日 16時
