週末はきみと一緒に【#18】 (ページ4)

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milk&honey -04 ページ4

最近通い始めた塾は8割くらいが他校の生徒だ。

知り合いがいないほうがいいなと、なんとなくこの塾に決めた。
決まった座席に座りながら、
きょうは小テストだったことを思い出してテキストを開く。

『え、きょう小テスト？』

『……あ、うん』

隣に座る大谷くんも、違う高校。
模試の点数がトップクラスで。
いつも彼の周りには人がたくさんいる。
優しげな雰囲気も相まって人を惹きつけるのだ。

………はー、かっこよすぎ。

隣の席でたまに話せるだけで、十分。
いまだって、急に話しかけられただけで心臓がうるさい。

わたしが勝手に憧れているだけ。
住む世界が違う人。
きっと、この先、交わることもない。

---

『山本さん』

塾の建物を出て、スマホに目線を落としたときだった。
振り向くと、大谷くんが立っていて。

『駅前にできたカフェ、行かない？』

………え、なになになに。
思わぬ申し出に、挙動不審になったあと、
あれ、と思う。

彼のうしろには、女の子も含めたお友達が何人もいて。
《この状況》を察する。
…………馬鹿すぎる。
ふたりで、なわけがない。
みんなで、だ。

そしてわたしは、彼を囲むあの華やかなメンバーと会話を続けられる自信もなかった。

『………きょうは、用事が』

大谷くんの顔をみることはできないまま、
それじゃあ、と言って彼に背を向けた。

『………わり、みんな。俺、急用できちゃった。
また声掛けて』

《え、しょーへー行かないの》
《まじかよー》
《彼女とデートだろ》

不満げな声がわらわらと聞こえる。

ありえない期待をしているのか、足がろくに動かない。

『………山本さん、いこ』

わたしを追い抜きざまに、頭上から小さな声がした。

少しだけ触れた、指と指。

………脳が揺らされたような感覚。

わたしは、何が起きているのかもよく分からず。
駅へ向かう彼を追いかけた。

---

『………ごめん、急に。驚いたよね？』

『………え、いや。……わたしこそ、嘘ついてごめんなさい』

大丈夫だよ、山本さんとあの子らはタイプ違いすぎるもんね。と言う声は驚くほど優しい。

『……カフェ、よかったの？』

『山本さんいないなら、いいや』

………なんて、ひとだ。
何も言っていないのに。
瞬時に空気を読んで、わたしを気遣ってくれて。
勝手にわたしを喜ばせる。

とんでもない、ひとたらしだ。
頭がくらくらした。