週末はきみと一緒に【#18】 (ページ3)

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milk&honey -03 ページ3

《べつにいい》

たしかにそう言ったものの。
こんなにすぐ再婚するなんて思っていなかったのが本音だ。

実に、あっさりと。

同い年の弟ができて。
………ついでに苗字が変わった。

男性側の姓を名乗ることが当たり前ではないのをわかってはいるし、別にこだわりなんてなかったが。

いちいち他人に詮索されるのも面倒だったし。
高校では、苗字を変えずに今まで通り過ごせることに安心した。

『A、さすがに引っ越し落ち着いたん』

『………まだ段ボール山積み』

同じクラスの泰ちゃんには、諸々話している。
元々住んでた家が近所で、小さい時から家族ぐるみで仲が良かった。

『生意気な《弟》とうまくやってんの』

『やれてると思う？』

『由伸、いいやつのはずなんだけど』

『…………どのへんが？』

泰ちゃんと《ヤツ》が知り合いだと知った時は、
本当に世間は狭いのだと驚いた。
中学の時、同じシニアの野球チームでプレーしていたらしい。

《きのうなんて、》

そう切り出したわたしの話を、泰ちゃんは笑いながら聞いてくれるようだった。

---

『…………そこ、わたしの定位置なんだけど』

『……は？』

《ヤツ》はほぼ家にいない。
お母さん(まだ呼び方慣れない)の話では、野球漬けらしい。同居して数週間経ったが朝も夜もほぼ顔を合わせることはなかった。
きょうは部活が休みらしく、めずらしく家にいたのだ。

リビングでだらだらしよう、と思ったら。
わたしのお気に入りの場所に《ヤツ》がいた。

『……ひろいとこあいてるやん』

確かに、大きめのふかふかソファは空いているが。
わたしは占領されたそのチェアに座りたいのだ。

『はやいもん勝ち』

不毛なやり取りであることは百も承知。
勝ち誇ったような表情の《ヤツ》になにも言えない自分がくやしい。仕方なく、大きめソファに体を預けたとき。

『…………それぞれいないときに同じとこ座ってて、気合うなって思ってたんだよね』

リビングを見渡せるキッチンから、こちらのやりとりを眺めていた父親がぽつりと言う。
……すこしにやけた顔で。

---

『………いや。やっぱいーや』

『え？なに、気になる』

泰ちゃんは、表情が読めない顔をたまにする。

『………なんか。ノロケ聞かされてるみたいだなって』

………やっぱり、聞かなければよかった。
そのあとの授業はロクに頭に入ってこなかった。