candy -02 ページ46
企画書のフィードバックは滞りなく終了した。
Aさんは俺の所属するチームのリーダーということもあり、最近どう？という話になる。
『……ぼちぼち、ですね』
さっきの、福也さんの言葉を思い出す。
俺は不完全燃焼だった。
………俺は、《福也さんからAさんを奪ってやりたい》などと思ってしまっていた。
『Aさん、福也さんと仲良いですよね』
『あー、同期だからね』
『………最近飯行くとずっと結婚の話ですよ。うらやましいです』
途端、彼女の顔は曇る。
この話はしたくない、という顔だ。
『………おめでたいよね』
自分からこのやりとりを仕組んだくせに。
彼女の悲しげな顔に、心が揺らいたが。
俺の口は閉じることなく、言葉を紡ぐ。
『結婚式、楽しみですね』
『…………そうだね』
『福也さん。
……………見る目、ないっすね。
こんな綺麗な人が近くにいんのに』
『…………山本くん。戻ろうか』
俯いたまま発せられた声は震えていた。
立ち上がった彼女が、会議室を足早に出て行こうとしたので思わず腕を掴む。
気づかれてたんだ、という声に力はない。
…………どうしようもなく、
彼女をこの腕に閉じ込めてしまいたい。
自身に引き寄せようとして、彼女の表情に息を呑む。
俺をとらえたその瞳は、泣いているのに笑っていて。
俺はしてしまったことの重大さに、ようやく気づく。
『……………すみません。
Aさんを、傷つけたかったわけじゃない、』
結果的にそうなっているのだから、俺は謝るしかない。
『………思い上がらないで』
『Aさんが、すきで、』
『……………なに、それ。これ以上、わたしを馬鹿に、』
『してないです。
こんな馬鹿げたことをする理由。
…………あなたがすき以外にない』
『…………馬鹿、なの』
『…………馬鹿、です』
しずかに彼女の腕をひいて、そっと背中に腕を回す。
『…………ちゃんと、眠れてないんですか』
『……なん、で』
『見てれば、わかります』
『…………わたしを、慰めようなんて。
ひゃくねん、はやい』
かわいすぎる返しと。
俺の背中におずおずと触れられた彼女の手を感じて。
信じられないほど、満たされた気持ちになってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 523人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えつん(プロフ) - 前回同様仕事終わりにまとめ読みしちゃいました🥺💕chamomileも、majiolica blueも癖に刺さります😭続編楽しみに待ってます！いつも更新ありがとうございます💖 (10月5日 20時) (
レス) @page50 id: 9cb0ae837c (このIDを非表示/違反報告)
くいっく(プロフ) - 最高です！ (8月7日 4時) (レス) @page39 id: ee29a1484e (このIDを非表示/違反報告)
345(プロフ) - えつんさん» intoはすこし前からあたためていた内容で、 うまく表現しきれていないところもある中、 素敵なご感想ありがとうございますっっ🥹 (6月15日 0時) (レス) id: 368cf82bc4 (このIDを非表示/違反報告)
えつん(プロフ) - こんばんわ！仕事終わってこんな時間に新作拝見いたしました…！into最高です、、、とてもギュッてなりました🥺❤️ (6月14日 3時) (レス) id: 9cb0ae837c (このIDを非表示/違反報告)
345(プロフ) - えつんさん» ありがとうございます！！ 励みになります🥹やりたい放題ですが、またお待ちしております☺️ (6月5日 21時) (レス) @page23 id: 368cf82bc4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：345 | 作成日時：2023年5月27日 9時
