蜘蛛女...2

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―志摩 side






デスクで九重と話すAに纏わりつく伊吹をカウンターから眺めながら数分前のやりとりを考えていた









“志摩ってAの事好きなんだろ？”





伊吹のバカがまた訳の分からない事を言ってきた時は、その唐突さに否定も肯定も出来なかったが







冷静に考えた時、俺は何と答えるのだろう









初めて会った頃のAはあまり笑わず、全員と一定の距離感を保ち淡々と仕事をこなしていたせいか接し方がよく分からなかった





だが初めて一緒になった現場で、Aは考えるよりも先に動き、俺の手を掴んだ









いつも冷静だったAが、後先を考えず咄嗟に動いてしまったと自分でも戸惑いながら言っていたのを見て、初めてAの“感情”を見た気がした







Aとバディを組んだ時も、嫌々伊吹の代わりを務めていたが、強い意志を持って「刑事である自分」を突き通した







“私が危険な目に合うからという理由だけでしたら指示には従えません。私も行きます”









警察官である以上、危険な事も起こる







だがAは



まるで「そうでなくちゃいけない」と自分に言い聞かせているように感じた









今回の件で重症を負ったのにも関わらず、それを当然の事だと言うAが俺にはどうしても



自分の命は二の次だと思っているように見える









冷静に物事を見る事ができるが、もしかしたら本質的な部分は伊吹のように感情で突っ走ってしまう猛獣が隠れているのかもしれない






しかし伊吹との決定的な違いは




自分の命を即座に投げ捨てる危険性を秘めている事









自分が暴走する可能性を分かっているからこそ


感情に蓋をしながら、あえて冷静でいようとしている





本当は冷静なんかじゃなく、ちゃんと感情豊かな女性なんだろう







だからこそ入院中見舞いの品は日々増え、復帰した姿を4機捜だけでなく機捜全体が喜んでいた




いつの間にかAという人間に惹かれ、皆が信頼を寄せる存在になっている



俺が知らないだけで、元々1機捜に居た頃からそうなのかもしれない









6年前の事件が起こる前は


どんな話し方で、どんな表情をしていたんだろう





たくさん笑っていたんだろうか








俺が知らないAを知りたいと思っているのは



Aという存在が俺の中で大きくなっているからだという事









そんなの、俺が一番分かってる





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