蜘蛛女...2

...39：過去 ページ23

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―･･･6年前




「大型商業施設にて立てこもり事件が発生した。犯人は確認できている限り3名。人質は大人8名と子供3名。現在SATが出動して周辺を囲んでいる。お前たちには正面ビル屋上から狙ってもらう。」



隊長が周辺地図を指しながら的確に指示を出す



「A地点は犯人の正面にあたる位置だが、ここは木やオブジェの障害物、加えて室内では人質を盾にしている。いつも以上に狙いにくい状況だ。





椎名、行けるか」









『はい。行きます』









―･･･






“狙撃B 配備完了”


“狙撃C 配備完了”




次々と各地点へと配備する中、正面ビル屋上へと到着したA







『狙撃A 配備完了』





《よし、椎名、お前の腕は俺の隊No1だ。落ち着いていけよ》





『了解』









スコープから見える景色は、道路脇の木々と室内の人質が重なり合い、かろうじて犯人が見え隠れする状況







確実なポイントを見極める為集中し始めた時







『･････裕太････!!』




並ぶ人質の中に、この春中学生になったばかりの弟の姿があった









動揺するAの耳に隊長の声が響く






《どうした》




『････いえ、何でもありません』









普段なら何も考えずスコープを覗き、そこから見える世界に集中する






かつて、この仕事が怖いと言った同僚に









狙撃はmm単位で結果が変わる世界


いついかなる状況に置いても心を乱されず冷静でいなくてはならない


手の震えなどあってはならない


怖いと思うならすぐに狙撃手を辞めるべきだ









そう言い放っていた自分が、




こんなにも心をかき乱され、動揺し





手の震えが目に見えるほどな状態で









何故銃を握ってしまっているのだろう






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