キミのトリコ！２

・ ページ42

_


「だんまりを決め込むのは難しいから、どういう方向でファンに伝えるのか一度帰ってゆうたくんと話し合って。記事が出るのは明後日だから、明日の夜までにどうするか決めて報告ちょうだい」

マネージャーさんの言葉に首を縦に振って、事務所を後にした。

タクシーの中でスマートフォンを確認すると、文春オンラインの人からツイッターに事実確認のDMが来ていて、心の中で確認とるの遅いわ！ってツッコミを入れる。

優太くんからは何もメッセージが来ていないから、まだ知らないのか、気づいていないのか。

“今日、早く帰ってこれる？”と送信するとすぐに既読が付いて、“今ちょうど帰るとこ”って。
帰ってきたら、ちゃんと話し合わなきゃ。優太くんにこれ以上迷惑かけたくなかったのに。



私が到着するともう優太くんは家に居て、「早く帰ってこれる？って言うから家に居るのかと思ったらいねえやん」ってちょっと怒られた。
この様子じゃ、まだ記事が出ることは知らないみたいだ。



『…ちょっと事務所行っとって』
「一人で外出たら危ないでしょうが」

外行ってたんなら疲れてるっしょ、今日はウーバーでも取るか、ってスマホを眺める優太くん。


『この間お寿司食べに連れてってもらったの、写真撮られとって記事になるって』

突拍子もなくそう告げると、優太くんはあまり驚いた表情を見せず、「うわ本当だ、DM来てるわ」ってソファに腰を下ろした。

突っ立ったままそれを眺めていると、「こっちおいで」って隣をポンポンと叩く。

言う通りにすると、頭を撫でられた。


「うわー、がっつりやん」
『明後日やって、記事出るの』
「だから事務所行ってたんだ」
『うん、ファンの子に黙っとるのは良くないけん優太くんと話してどうするのか決めろって』
「どうするのかって？最悪ここ出てくってこと？」
『それもありやって』
「無しでしょ」
『でも、これ以上迷惑かけるわけにもいかんなって、私考え甘かったんやなって、実感した』
「んー、まあ、これは完全に迷惑やな」

迷惑だ迷惑だとは思っていたけど、いざ本人に言われるとちょっと落ち込む。


「付き合ってるって記事出ちゃったし、じゃあ本当に付き合おっかみたいな言い方はしたくなかった」

『………？』

「記事が出たから告白するみたいなのはしたくなかったのに、すげー迷惑だわ」

優太くんがスマホを置いて、背もたれに身体を預け天を仰ぐ。…どういうこと？


_

・→←迷惑と決意

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す