OVERWRITE (ページ45)

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砕ける盾ページ45

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ミュージカルはそれはそれは楽しかった。最後のカーテンコールで、思いっきり叫んでみたら主演のアイドルがこっちに手を振ってくれた。ファンサービスを貰えるってこんなに嬉しいんだな。

今度は出口に向かって人の波が動く。その中に混ざって出口へ向かう間、Aちゃんが化粧室へいった。その間どこかで何かが震えている。自分の携帯を見てもシンとしていて、Aちゃんから預かったバッグの中にある携帯がピカピカ光っていた。

「ごめん！おまたせ」
「ん、ぜーんぜん。電話鳴ってたよ」
「え、うそ、ありがとう」

携帯を取り出して操作するAちゃんをじっと見つめる。

「セフン君からだ」

その名前を聞いて、さっと血の気が引いた。
すっごい悪いことをしている気分になる。
でもセフンがドタキャンしたんだし。

「かけ直したら？」

そういうことで罪悪感を少しでも軽くする。
でもAちゃんは携帯をバッグにしまった。

「あとで」

にこっと笑って進み始めた。慌てて隣に並ぶ。

「…いーの？」
「うん」
「なんで？仕事終わったんじゃね？」
「うん。だとおもう」
「………だったらかけてあげなよ」
「……ベッキョン用事は？今からいく？」
「え…いや、行かないけど…」
「だったらご飯行こ」
「…うん、いいけど、それならセフンも呼ぼ」
「ベッキョンと一緒にいたい」

ズドンって何かが俺の胸を撃った。
それと一緒に、罪悪感も意思もなにもかもバラバラに砕け散る。

だめだこれ。必死に押し込めた感情がダラダラと隙間から漏れてくる。

「……なんで？」

でも簡単に負けちゃいけない。バラバラになったものをかき集めた。手のひらに乗ったのはわずか少量だけど。

「この前一緒にいれなかったし………楽しいから」

静かに少しずつパラパラと手のひらから零れていく。

「…セフンと３人じゃだめ？」
「……うん」
「でも、３人でも俺いるじゃん」
「ベッキョンは私と二人は嫌？…かな」

足元にすべて落ちて手のひらにはもう何も乗ってない。

「嫌なわけない」

そう言うと嬉しそうに笑うから、どうしようもない。出口を出たところでまた携帯が鳴った。

その電話、出ないでほしい。
俺の罪悪感を砕いた責任とって。

バッグから取り出そうとする手を掴む。

「え…」
「…セフン？」
「…あ、うん。かけ直してくれた」
「だめ」
「え、さっき」
「もう、だめ」

咄嗟に掴んだ手首からゆっくり滑らせて手を強く握った。