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定時はとっくの昔に過ぎたが社内にはほとんどの人が残っている。お菓子をボリボリ食べながらデータ入力をしていたけど流石に腹が減った。そーいや昼抜いたんだっけ。でもまだ帰れそうもないし…コンビニでも行くか。

そういって財布だけ持って行けば、ビルのエントランスにあるベンチに、１人で座っている経理ちゃんを見つけてしまった。即座に目を反らし早歩きで出ようとすると後ろから手を捕まれた。

「お話があります」

経理ちゃんはまっすぐ俺を見ていて、心に溜まっていた罪悪感が沸騰した。逃げようとしたのバレてた。ギョンスに怒られる。

「…うん、俺もある」

ベンチに腰掛けると、彼女は自分の膝あたりを見ながら口を開いた。

「先日はすみませんでした。私…おかしかった」
「……それを言うのは俺の方」

謝っても謝りきれない、男として最低だった。
相手の気持ちを知っておいて答えられないくせに流されてしまった。

「でも、嘘は言ってないんです。改めて言います。あなたが好きです

一回間違ってしまっても、追いかけてきてくれなくても好きです。今この瞬間も、…そうやって辛そうにしていても好きです。

だからやっぱり誰かの代わりなんて嫌。私を見てもらえないのなら時間がかかっても、違う道を進みたい。

そのために…もう一度突き放してくれませんか？」

真っ赤な目をこちらに向け、スカートをぎゅっと握る。

あーなんか、この子にとっての俺って、俺にとっての先輩なのかな。

同じ思いをしてるのかな。
だったら、叶えてあげたい。

でも彼女がほしいわけじゃなく、好きな人に好かれたい。それが今俺が求めてること。きっと彼女も同じはず。同じ思いをしてるからこそ、今度は簡単に流されちゃダメだ。

気持ちが返ってこない相手に苦しむのは自分だ。注ぐだけ無駄。

「俺も改めて言うね。気持ちには答えられない。きっとこれから先もずっと。だから行き止まりにずっといないで今すぐ引き返して新しい道を見つけてほしい。俺のことなんか忘れて」

彼女に言って、自分にも言ってる。
先輩は俺を見ることはない。どんだけ俺が引き摺ろうがこの先もずっと、ない。

だから、俺も引き返さなきゃいけない。
それに、違う道はここに来る途中にどこかで見たし。今から行き先を変えても遅くないでしょ。