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どこでどう広まったかわからないけど、次の日には俺と経理の子が近づいているという噂が飛び交い本人である俺にも飛んで当たった。

「なにそれ？なんでそうなんの」
「俺もよく知らないけど、経理の子がイメチェンしたと思ったらお前と話してるのみた人がいるって」
「たったそんだけで？はぁーうぜ」
「じゃあ狙ってるわけじゃ…」
「ないっつの！それ火消ししといて」
「えー、俺には無理」

ビルのラウンジで過ごす昼休み。
他人事のように笑い弁当を掻き込む同期の脛に八つ当たりのキックをかました。

ブブ、と短く震えるスマホに気を戻されタップするとこのタイミングでAちゃんから久しぶりにラインが来た。

『来週の土曜日空いてる？』
『空いてるよん』
『だったらセフン君と後輩と四人で遊ばない？』

　あれっきりだったし内心めちゃくちゃ舞い上がったのに、また俺一人じゃないんかよ。セフンと、きっと同期ちゃんのことだろう。
…なんだか気が引ける。

『いいね！詳細そっちで決めちゃって』

でも空いてると言った手前、とりあえずそう返事する以外になかった。気が引けるっていっても、どーせ遊びに行ったら楽しいんだ。

・

大好きな金曜日。さっさと仕事を終えて今週こそ花金を楽しんでやる。んで明日は朝からレンタカーでドライブすることになったから早めに切り上げて準備だ。

外回りからの直帰でもよかったけど、提出しなければいけない書類を持ち帰っていたのに気付き、一度帰社した。そしてすぐに帰りのエレベーター待ちの集団に混じる。その中にはあの経理のメガネっ子もいて、目が合い軽く会釈をした。

最近よく会う気がするけど、同じ会社で働いてるんだからたぶん今までもずっと会ってたはず。はっきりとした接点がなかったから気付かなかっただけか。

エレベーターから降りると肩をトントンと控えめに叩かれた。振り返ると元メガネっ子がいた。

「お疲れ様です」
「おー、お疲れっす！」
「今からご予定あります？」
「ぅえ、あ、いや」
「あの…もしよければ、今日食事にいきませんか…？」
「え…あ！あーハイハイ！行きますか！」
「よかったぁ…ありがとうございます」

ほっと胸を撫で下ろす彼女はほんのり耳を赤くしてへにゃって笑った。俺の言葉にこんな反応するなんて、かわいいなって思ってしまう。
先輩もAちゃんも、俺が何言ったってどーってことなさそうだしさ？