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「ご存知だと思うんですがうちの会社小さいし社員数も少ない中技術部でAさん頑張ってたんですけど、ある先輩がAさんのこと好きですごい執着してたんです。

彼氏でも何でもないんですよ？あることないこと言いふらしたりして…Aさんがやめてくださいって言ったら逆上しちゃって、次の日から技術部全員巻き込んで無視。製作途中のデータを削除とか物隠したりとかパワハラとかそれはもうひどくて

Aさんも立場があるし我慢してたんですけど、営業のセフンが異変に気づいて上に報告したんです。それで発覚して首謀者の頭おかしいやつは飛ばされたんですけど

残ってる奴がセフンに注意されてムカついたのかAさんに当たったり嫌がらせが度を増して。で、セフンが退職を勧めたんです。

Aさんは最初は嫌がってたんですけどそれが身のためだと説得して…

んー、だからセフンってAさんの救世主だけど、Aさんのいじめを増長させちゃった部分もあるんですよね。

でもAさんはセフンにとても感謝してるって言ってましたがセフンは責任感じてるみたいですよ。…ま、こんなとこですかね？」

テンプレ化とはいえ、ムカつきが伝わってきた。気付けば手に力が入って握りしめていたぐらい。こんなの、相当辛かっただろうな。

それにセフンとAちゃんの間の不思議な空気感も少し理解できた。他人の俺がズケズケと入り込んではいけない。

「で…ベッキョンさんはAさんが好きなんですか？」
「んっ、なんで？」

急な問いかけに戸惑う俺とキョトン顔の同期ちゃん。それに対して良い答えをまだ弾き出せてない。

「いい友達って思ってる…けど」
「へぇ…いつまでそう思えますかね」
「どういう意味？」
「私セフンに協力するって言ってるので、ベッキョンさんには協力できませんけど」
「待った俺別に…っていうかセフンに協力？やっぱあいつ好きなの？」
「……」

　あんなにペラペラしゃべってたのにだんまり決めやがった。またもズズーっと一気に吸い上げてる。この子あんまり秘密守れないタイプだな。

「友達でもそうじゃなくてもきっとベッキョンさんは辛い思いをすると思います」

　俺を見ずに外の景色を見ながら呟いた。同期ちゃんから目線を外し、俺も外を見た。連休中はどこも人が多い。目の前の交差点の信号が青に変わると一気に人が動き出す。

目ではそれを見ているけれど俺の頭は同期ちゃんの言葉の意味を解読するのに必死だった。