OVERWRITE (ページ20)

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　結局折電があったのはそれから一時間以上過ぎてからだった。聞こえてくる声と共にうるさい音。こいつ飲んでるな？イラつきすぎて貧乏揺すりも、指でトントンも収まらない。

詳細をきちんと書き込み走って経理まで行くと、先ほどの女の子が１人で窓の外を見ていた。

あー、この子だって帰りたいのに帰れなかったんだよな。

「すみません！遅くなりました！」
「わっ！びっくりした」
「あっ、ハハ、すみません」
「いえ…ありがとうございます」

　俺から受け取り、パソコンの前に座って打ち込みを始めた。

「それじゃ…」

　やっと帰れる！って、帰ろうとしたけどそんな俺の声も届いていないのか、ただただキーボードを忙しなく叩いている。ゆっくりと落ちてくるメガネを指で何度も上げてる。ネジ緩そうだ。

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「えっ！」

　コートを羽織った女の子が俺に気づいた。誰の席だかわからないけど適当に机に突っ伏してパズドラとかやってたらいつの間にか終わったらしい。

「なんでまだいるんですか？」
「…や、なんか…待たせたのに先に帰るのは忍びなくて」
「……チョさんってあなたではないですよね？あなたも帰るところだったのに…気にしなくてよかったのに…」
「俺が気になっただけなんで。帰りましょ」

　なんだか納得行ってなさそうな顔をしているが、３歩後ろをついてくる。あのとき帰れていたら今頃二軒目行くぞとかいってそうな時間だった。

あーあ、二軒目呼ばれたって先に酔いちくれてる奴らに混じるのはつまらないし家で飲むか。

エレベーターのボタンを押すと、ポンと音がなり扉が開いた。エレベーター内には彼女と二人。ちらりと盗み見ると、スマホで必死に何かを打っていた。

「てかほんと、遅くなってすみませんでした」
「え、あ…全然」
「予定とかあったんじゃないですか？」
「…まっすぐ家に帰るだけです」
「明日から三連休なのに？勿体ない」

　そういうとまたメガネを上げてはにかんだ。

「それ絶対ネジ緩いですよね？」
「そうなんですよ…締めてもらってもすぐ緩んじゃって。度数も合わないし」
「だったらいっそコンタクトとかにしてみては？」
「んー…」
「外してみてくださいよ」

エレベーターが１階につくまでの、ただの繋ぎ。今までほとんど話したことがない人にいきなり言うことじゃないよなー、間違えた。

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