OVERWRITE (ページ19)

今日:21 hit、昨日:6 hit、合計:266,399 hit

有頂天からの転落ページ19

.

　あれからはまたラインでやり取りする日々に戻った。

でも、遊びに行こうかな、なんて分かりやすく送ってもAちゃんは華麗にスルーする。もしかしてあの日何かミスって距離おかれてる…？

なんでスルーされるのかというはっきりとした理由は分からないけど、まだラインをしてくれている限り完全にアウトとは言えないだろ。ていうか、アウトなんて思いたくない。

…なのに俺のトーク一覧にはパッと見Aちゃんの名前はない。下に追いやられてる。

『明日夜空いてない？』

正直どうでもいい女の子たちから、誘いのラインが途切れない。俺がフリーであることを知ってるからだ。

そうだよ？俺フリーだお？Aちゃん俺のことほっといていいの？彼女ができたら一緒にゲームとかもできなくなるんだよ。

女の子には断りをいれとくから、誘うなら今だよAちゃん。

金曜日の仕事が終わった。明日から三連休だ！

今日も１日忙しかった。飲みたい。喉も乾いたし、炭酸のシュワシュワを欲している。荷物をまとめて会社を出ようとすると、経理のメガネの女の子が営業部の入り口に立っていた。どうしたんだろ。周りを見渡しても、今から出れそうなのは俺だけだったから、荷物をおいて近づいた。

「どうかしました？」
「あ、あの今日提出された領収書のことで…」
「え、あ…すみません」

不備がある、とのことで差し出された領収書には上司の名前が書かれた付箋紙が貼ってあった。うわ、今日確かに外回りからの直帰だよ。

「帰社しちゃってて、また来週でも…？」
「あー…、今日締めなのでできれば今日中にお願いしたいんですが」

　マジかよ。でもこちら側の不備だし、わかりましたと受け取ったはいいものの上司に連絡がつかない。あー、こんなことなら気づかないフリしときゃよかった。

「あれ？帰んないの？」
「…絶賛帰りてーよ」

　帰ろうとした同期がイスに凭れている俺を見て歩みを止めた。帰りたいに決まってる。なのにこのクソ上司、なにしてんだよ。仕事できないとは知ってるけど、領収書もまともに提出できないのか。

「なら何してんの？飲み行こーや」
「行きたいけど面倒なもん受け取ったからさー、見てこれ。だからもーちょい待てない？」
「…あ、俺先帰るわ。じゃ。」
「あっお前！ふざけんなよ！」

　薄情なやつめ。そそくさと去っていく後ろ姿にイーッってしたけど、見てない。

.