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　レイトショーはやっぱり人が少ない。俺たち以外に３人くらいのおじさんしかいなかった。こんなミステリー映画、カップルで見るような内容でもないしな。

「これって最近よく出てる俳優さんのやつ？」
「そうそう」
「見たかったんだよねー、でも一人じゃなかなか行かなくて」
「まぁなー」
「ベクは映画とかよく行く？」
「え、全然行かない」
「じゃあこれ気まぐれ？」
「…だね、見たいとは思ってたけど」
「てかさ、さっきまで女の子といた？」
「…えっ、え、え？」
「当たりだ」

　ゆるーく他愛もなく話してたハズなのに、急に浮気を指摘されて動揺する彼氏みたいになってしまった。背筋が伸びて声もでかくなる。ニヤニヤしているAちゃんに、どう弁解しようかと脳ミソをフル回転中。

「…え、なんで？」
「こっちの腕にめっちゃキラキラついてていい匂いする」

　そういって腕に顔を近づけてすんすん匂う。マジかよ、うわ、もう最悪じゃん。あの子確かにキラキラしてたけどそれ物理的にかよ。

手で擦って払ってみるけど取れるはずもなくAちゃんは笑ってた。

「ご、ごめん…あの、紹介された子なんだけど飯食っただけで」
「うん」
「だから変な感じじゃなくて」
「なに変な感じって」
「何も、どうでもいいって感じ」
「あーあ、その子かわいそ」
「えっ？あ、ちゃんと送ったよ。ごめん」
「うん、別にいいよ？私ベクの何でもないし」

　きょとんとした顔してるAちゃんを見て、タイミングよく何かを言う前に劇場内が暗くなり映画が始まった。

　そうだよな、例え女の子をはしごしてる(表現が悪いが)にしても確かにAちゃんは俺の何でもないし、必死に弁解したところでどうにもならない。

それに弁解すればするほど自分の評価を下げてる気がする。

なんか、この子を前にすると"やっちまったな"って思うことばっかりだ。

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