完璧じゃない男たち

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　言い終わると同時にぎゅうっといつもみたいに背骨が折れそうなくらい抱き締められる。ぐりぐりと首もとに頭を擦り付けてくる大型犬をひっぺがして顔を見合わせると今にも泣きそうな顔をしていた。


「俺のこと嫌いにならないで…」


　それはこっちの台詞なのに。でも言葉でいうより先に、唇を重ねて行動で示す。嫌いだったらキスなんてしない。しばらくの間没頭していたら、チャニョルに体重をかけられて後ろに一歩ずつ下がり、挙げ句机の上に乗った。バサッと書類が落ちてから我に帰る。


「チャニョル…今から会議が」
「A俺のこと好き？まだ好き？」
「…うん」
「ちゃんと言わないとわかんない！」
「好きだって！」
「なんでそんなヤケクソな感じで言う？」
「…好きな癖に」
「ヤケクソは嫌い！ちゃんと気持ち込めて！」


　どんどんこっちに迫ってきて、後ろにひっ返りそうになる。落ちないように胸ぐらを掴んで、押して、そのまま壁にチャニョルを張り付けた。そして、顔の横には手が届かないけど壁ドン。


「好きって言ってほしいの？」
「はぁ、はい…」
「言われたら嬉しい？」
「嬉しい…」
「じゃあ…言わない」
「うぁ〜A〜好きだ…」


　顔をくしゃっとさせながらへなへな壁に沿いながら座り込んで私の足に抱きついた。チャニョルの目線まで屈み、顎を人差し指で持ち上げる。ごくりとチャニョルの喉が動いた。


「言ってほしいならさっさと立って会議の準備しな」
「…っします！」


　私が準備を止めたことは棚に上げた。時刻は会議が始まる15分前。もう人が入ってきても遅くない。ちょっとぐしゃっとなって散らばった資料を拾い上げた。バタバタと準備を進めるチャニョルに問いかける。


「部長どこに座る？」
「え？あ、ここ！」
「じゃこれ部長のとこに置いて」
「やっぱりAはクールだなぁ」


　ぐしゃっとなった資料は憎き部長の席へ。




　チャニョルの敵討ちもむなしく部長は私にこの前の件について撤回も謝罪もなしだった。だけどもう気にしない。私をわかってくれる人がいるって分かったから。





「人事の子とご飯行くんだって？」
「あ、それは」
「なにふざけたことしてんの？」
「あっ」
「チャニョルは誰のもの？」
「Aーー！！」



　そしてこんなチャニョルに付き合えるのも、後にも先にも私しかいない。






end

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