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そう言ってはにかんだ。
俺も怖気づくたびに自分が嫌いだって言い訳して片付けないで、なにか言わないと。
「……Aさんも」
「ん？」
「ゆ」
「……」
「ゆ、その……ゆか、浴衣、かわいい……ね。すごく」
俺の耳に届くのは自分の鼓動と周囲の喧騒だけ。Aさんは下を向いてしまった。言わなきゃよかった。いや、言葉を間違えた。もっとふわっとした言葉を選べばよかった。夏目漱石の小説でも読み尽くせばよかった。気持ち悪いと思われているかもしれない。だから夏祭り、行きたくなかったんだ。でも二人で夏祭りに行けて、死ぬまでに一度でもAさんの浴衣姿を見ることができて心から良かったとおもう。
最後の夏祭りだからと足を運ぶ人が多いのか、少しでも目を離せばはぐれそうなほどの人ごみの中で、俺とAさんはほとんど会話もなく必死に前に進んだ。
はぐれそうだからと何度も手を出しかけたけれど、結局その手はAさんの前に出ることはなく、ぎゅっと握りしめてポケットに入れた。
一際混み合っていたところを抜けると歩きやすくなり、Aさんと並んで歩いた。人に揉まれて少し髪が乱れてしまったらしく、手でそっと直しているその仕草がたまらなくたおやかで、心が落ち着かない。
「あ、ねぇギョンスくん」
「……ん？」
「なんか食べない？お腹すいたし」
「うん。何か食べたいものある？」
Aさんは嬉しそうにお好み焼きの出店に歩いた。その後ろをついていく。おじさんが『いくつ？』とAさんに聞いて、Aさんが俺を振り返った。
「ギョンスくんも食べる？」
「うん」
正直緊張してるし腹なんか減ってない。いるとしたら頭と心を落ち着かせる澄んだ酸素がほしい。けど、Aさんと同じものを食べてみたい。
おじさんがお好み焼きが入ったパックをふたつビニール袋に入れてくれた。Aさんが小さな巾着から財布を出そうとしているのを制して、お札を差し出す。引き換えに袋を受け取り、先へ進もうとするとAさんが俺の服を掴んだ。
「だめだよ」
「いいよ」
「よくない！わたしが食べたいっていったし払わせて」
巾着から小さい財布を取り出し、500円玉を俺に握らせようとしてくる。いいって、と振り払ってるのに『よくない！』ってしつこいから、思わずその手を掴んだ。Aさんが口を開けて固まる。
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こむ(プロフ) - そらぬこさん» そらぬこさん！最後までおつきあいありがとうございました；；私も終わらせておいて寂しいですが、幸せにしてあげれたかなという達成感もありヽ(^◇^*)/またお暇な時にでも読み返してもらえたら嬉しいです！ありがとうございました！ (2021年10月27日 11時) (
レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
そらぬこ(プロフ) - こむさん〜〜！！更新待っておりました( ; ;)またこむさんの作品読むことができて嬉しいです！！そしてスパンコール完結お疲れ様でした！終わってしまって寂しい気持ちもありますが何度も読み返したい大好きな作品です！本当にお疲れ様でした〜！ (2021年10月14日 11時) (レス) id: a73859c123 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - ヒロミさん» 大好きだと言ってもらえてとってもしあわせです。こちらこそ3年という長い期間お付き合いくださって本当にありがとうございました！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - mifさん» はじめまして。コメントありがとうございます！何度も読み返して頂いていたのですね。めちゃくちゃ嬉しいです！寂しいと幸せ、わかります……作者も感じています……最後までお付き合いくださって本当にありがとうございました！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - ハクさん» うわーんうれしい！ありがとうございます！ずっとふたりを見守って来てくださったからこそ、より幸せに感じていただけたように思います。お付き合いくださり本当にありがとうございました！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむ
| 作成日時：2020年8月2日 15時
