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「……チャニョル先生」
せっかく登った階段も降りて、もう一度先生の前に立つ。先生は微笑んだまま首をかしげた。
「もしね」
「うん」
「もし、私のお願いが元気にしててじゃなくて、キスしてだったらしてくれた？」
そういえば途端に顔が強張り、大きな目が泳いだ。
「してくれなかった？」
でもそれも一瞬で、何かを諦めたように笑いながら小さく息を吐いた。
「してた」
「でも出来なかったと思う」
その返事にがっかりはしなかった。
「相手は生徒だから」
むしろなんか嬉しく思った。
だから『そっか』小さい声で返すだけに終わると、先生の大きな手が頭の上に優しく乗っかった。
「昼は驚かせてごめん。怖かったよね？」
「えっ……ううん、怖かったわけじゃ……」
こんなに近いのに近付けないのはひたすらにもどかしいけど、先生が私のことをちゃんと見つめてくれて、大切にしてくれてるって気付いたら嬉しいよ。
するっと頭を落ちていった手はそのままパーカーのポケットへと入っていく。
「もう家に入って。親御さんも心配するから」
「………うん」
後ろ髪を引かれながら階段を一段一段ゆっくり登る。何度も先生を振り返って手を振ったら、先生もちゃんと振り返してくれた。
玄関の前に着き、中に入る前にまた振り返る。
いつ振り返っても、チャニョル先生は少しもよそ見せずにずっと私だけ見てくれる。
「お誕生日おめでとう」
あんまり大きな声は出せなかった。
「おー、ありがとう」
先生の声も小さい。
「大好き」
もっと小さい声で告げる。
「……おー」
ちゃんと拾ってくれた。
玄関を開けて、しっかり手を振って、中に入った。
ゆっくりしまっていく玄関。きちんと鍵をかける。
でもすぐに解錠し、玄関を思いっきり開けた。
チャニョル先生、まだいた。こっちを見てた。
でも驚いたようでポカンと口を開けてる。
階段を転げ落ちる勢いで駆け下り、先生に飛び付く。
後ろによろけながらもちゃんと受け止めてくれて、強い力で抱きしめてくれる。
「どうし、」
「好き、本当に好き、宇宙で一番先生が好き」
「……」
「先生の誕生日を短い時間でも一緒に過ごせて嬉しい」
聞き飽きたであろう言葉を大きな耳にこれでもかと注ぎ込む。呆気に取られてる小さい顔を手で包んで引き寄せ、唇、ではなく頬にちゅっと口付けた。
「誕生日プレゼント！」
そして、先生が怒り出す前に逃げた。
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こむ(プロフ) - 花さん» ありがとうございます！パスワードがかかった作品は公開終了となっており、お教えしておりません。すみません！ (2021年10月5日 20時) (
レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - そらぬこさん» 攻防のときから！長らくお付き合いくださりありがとうございます！このあとの話も更新しましたので、まだお付き合いいただけるようであれば、ぜひ読んでくださると嬉しいです！ありがとうございますー！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - omatsuさん» 遅くなってしまい申し訳ありません…。最高のひとことをありがとうございます！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - よーこさん» よーこさんありがとうございます！めちゃくちゃ遅くなってしまいすみません。あたたかいコメントに胸が熱くなりました；； (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - ギョンちゃんさん» 大変遅くなってしまいましたが、こちらこそ読んでくださってありがとうございますー！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむ
| 作成日時：2019年10月16日 19時
