嘘の花束#8

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「……なにか？」
「次は？」
「行かないって毎度言ってますけど」
「………はぁ」
「かわいくねぇって？」
「よくわかったね。行こうよ」
「かわいくねぇって言われた人と行くと思います？」
「そういうとこ。そういうとこがさーほんっと………」
「……ほんっとなんですか？」
「キスしたい」
「は？マジで私に好きになってもらいたいって思ってる！？」


逆効果にも程がありますけど！もはやお馴染みとなった人差し指での優しいビンタを食らわすと、ジョンデさんはへらへら笑って頬を手で覆った。


「マジで好きだから好きになってよAちゃん」


私に拒否されて、その言葉が出てくるまでの思考が理解できなかった。でももっと理解できないのはそのジョンデさんに果てしなく胸をときめかされたことだった。


おかしいおかしいおかしい。私はジョンデさんみたいなイケメンは眼中にないのに、ただただかっこいい人に好きって言われて胸をときめかせるって私、普通の人になっちゃったじゃん！


「……好きにならないでって言ったくせに」



・



１ヶ月の海外出張も三週間目に突入すると仕事に慣れも出てきたけど、その分仕事が畳み掛けるように降ってくる。海外出張だから楽しみ、代わりたくないって言ってた私をぶん殴ってでも代わってほしいくらい、大変な毎日だった。

初めはあった休日も仕事に追われ、とにかく働いた。ジョンデさんと飲みに行ってないし、帰ったら即寝てた。そんな中、私達二人の仲間意識はとても強くなっていく。それは自然の摂理ともいうべきか、当たり前だった。


「疲れたよね？大丈夫？」


支社での出勤最終日、会社で少し気を抜ける時間があって、ソファーに座って目をつぶってたら隣にジョンデさんが腰を下ろした。ジョンデさんは私より責任が重い立場だから、私よりも疲れているはずなのに私の心配ばっかり。


「ジョンデさんもお疲れですよね？大丈夫ですか？」
「俺は全然。明日やっと休みだよ」
「あ〜…長かった」
「１ヶ月じゃなくて２ヶ月にしてくれたらこんなに疲弊しないで仕事できたのにね。予定詰めすぎだよね」
「本当にその通りです………ジョンデさん」
「ん？」
「今日飲みに行きません？」
「えっ……いいよ。でも珍しいね。寝なくていいの？」
「寝る前に大将のところで飲みたいです。そんな気分」


へへへって笑ってジョンデさんに寄り掛かった。するとジョンデさんも私に寄り掛かってきて頭が重なる。

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