幸せにしてよ (ページ34)

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34【昔話】（イニside）ページ34

それからAはだいぶ俺らに打ち解けていった

たくまやまこちゃんとも話できるようになった

けど…

イニ「A！」

編集に集中していたのか何度読んでも返事がないから耳元でちょっと大きな声で呼ぶとバッと怯えたような顔でこっちを見た

イニ「ぇ、ごめん、そんなうるさかった？」

「ぁ…ぃゃ…大丈夫…」

そう言うけど『ちょっとごめん』と両手で両耳を塞いだ

イニ「…」

「…ごめん、大丈夫」

両手を離したAが『なんだった？』と俺に用件を聞いてきた

イニ「いや…」

テオ「A」

さっきの一部始終を見てたテオくんがAを呼んだ

「ん？」

テオ「ちょっと、ここ、座って？」

「…」

テオくんが自分の前を指差すとそこに正座した

テオ「説教じゃないから、正座じゃなくて良いよ」

「…」

そう言われると正座から体育座りになった

テオ「ちゃんと話しとこうか？」

「話…？」

テオ「父親の虐待、何されたのか」

「…」

イニ「え、テオくん、それは…」

テオ「何されて、今、何がダメなのか」

イニ「…」

Aの方を見ると膝に顎をつけてボソボソと話し出した

「…タバコは、だめ」

テオ「うん、火傷のやつね」

「目に見えるところで吸われたり、ひどい時はタバコ見ただけで、過呼吸っていうか呼吸が苦しくなる」

テオ「うん、他には？」

「…大きい音とか、声とかも、だめ」

イニ「…」

さっきのは、それか…

「みんなで楽しく騒ぐ、とかは平気なんだけど、自分に向けられた大きな音とか、声とかが、だめ」

イニ「そうなったとき、どうしたらいい？」

「耳、塞いだら、気持ち落ち着く」

テオ「うん、他は？」

「物置、とかに、入れられたこと、あって…」

テオ「…」

「狭くて、暗いとこ、とか」

テオ「エレベーターとか？」

「うん」

テオ「他は？」

「他は、大丈夫」

テオ「分かった、俺らも気をつけるね」