【名探偵コナン】拗らせた名探偵 3 (ページ4)

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あなたはだれ？ページ4

Y side

『むかしむかし…森の奥のある城に、若く美しいがとても我儘で傲慢な王子様が住んでいました…＿』

脚本の子のナレーションから物語が始まり、進んでいく。

そして次はいよいよ野獣と2人きりの舞踏会

裏に入ったらすぐに服を脱がされ、セカセカと衣装係の子達に美しい黄色のドレスを着せられた

髪も整えてもらい、舞台袖で立つ

「Aちゃん」

クラスメイトの1人がわたしの隣に立った

「きっと一生忘れられない舞踏会になるわ…！楽しんで！」

それだけ言うと奥に戻って行ってしまった

…一生忘れられない舞踏会

絢斗くんと踊るより、新一と踊りたかったな

舞台袖から見えるコナンくんに目を向けてもこっちを見てくれる気配はなかった

　
　
　
　
　
　
　
「…」

正装をした野獣に近づいて、彼の腕に手を回す

音楽が流れて、ステージの中央まで歩くと、ベルのわたしが野獣をリードしながら踊っていく

ここに台詞はないし、楽しそうに愛おしそうに踊ってくれればイケる！と脚本の子が熱弁していたのを思い出しながら野獣である絢斗くんと踊る

「…！」

ターンをする途中、ここにいてはならないはずの人がこちらに向かってくるのが見えた

え？なんで？

観客も不思議に思ったのかザワザワし始めて、絢斗くんに小声で問いても、なにも返ってこない

「ねぇ、絢斗くんったら…っ」

「……」

すぐそこに、彼は立ち止まる

もしかして出番間違えてる？

や、でもそんなはずは…

「…」

そしてそのまま、野獣役であるはずの絢斗くんはわたしの手を離し、目の前にいる“カレ”にお辞儀をして、立ち去る

…え？どうしろと？

野獣ってここで人間に変わるんだっけ？！

パニックになって動けないわたしの手を“カレ”は取り、引き寄せて距離を縮める

ワンステップまた近づくと、下を向いてるわたしの顔を上げて、見えないその目から逸させなくする

「……」

片手は腰に手を回し、もう片手はわたしの手と繋げる

そして、流れている音楽に合わせて踊り始めた

「……だれですか」

「……」

絢斗くんの時よりも引き寄せられ、すぐ上に“カレ”の顔がある状態で、耳元に口を寄せて問いただしても、答えてくれる気配はなく、そのまま音楽に揺られるだけの時間が過ぎる

野獣との舞踏会のはずが、蘭達の劇のヒーロー

カラスのように黒く、凛々しい

黒衣の騎士との舞踏会になってしまった。