【名探偵コナン】拗らせた名探偵 3 (ページ12)

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Baiser ページ12

S side

「どうしたの？新一？」

「……」

暗い教室にAを押し込んで、そのまま身動き取れなくする。まだ目が慣れてないから何も見えない彼女はオレにしがみつく事しか出来ないみたいだ。

こんな事するつもりはなかった。

ただ本当に衝動的に、こっちを向いたAの少し紅潮した頬が、アイシャドーでキラキラしてる瞳が、マントの隙間から見える彼女の肌が、オレを刺激した

「ねえ？…新一？」

「……」

徐々に彼女の声が弱々しくなってくる。こんな暗闇の中、何も言わないオレに少し怖がり始めたんだろう。袖を掴んでいる手に力がこもるのがわかった

誰もいないこの部屋でAとなにをしようが誰も分かるはずないよな…

慣れてきた視界で目に入った彼女の唇。明るいところで見たとき、燃えるような赤でなく真紅。深みのある真っ赤だったそれは今は黒く、肌の白いAの唇を、暗闇の中でもここだと教えてくれる

どさくさに紛れて、これに自分のそれを重ねたら、事故だったとAは笑うか？それともオレを非難して嫌いになるか？

彼女の唇から目が離れずにいる自分を、やっぱり好きな女が目の前にいれば、ただのガキなんだなと実感した

「…ゃ」

「！」

小さく漏れたAの声に、ようやく我に返った

慌てて彼女を引き離し、少し離れたところにあるスイッチで教室の電気をつけた

「…わり」

「……ん」

1年前に、オレの両親の元へと遊びに行った日にあった出来事。その日のこと、ショックでAの記憶には残ってないが、あの日以来、彼女は暗闇に長時間いる事が出来なくなっていたのを忘れてた。

大丈夫かと、彼女の頬に手を添えて、顔を見ると

やっぱり頭が可笑しくなってんだろうか。

自然と彼女の唇にしか目が行かなくて、思わず自分の唇を軽く噛んだ。

ジーっと見てくるAに喉が鳴って、誘われるように彼女との距離を少しずつ縮めていった。

Aもびっくりした顔から、ゆっくり目を閉じて、了承を得たんだと勝手におもう。

その仕草に自然と口角が上がった。

あと、3センチ…

　

「ゴホッゴホッ」

「……チッ」

イヤ、誰だよ。

咳き込む誰かの声で今度はAが慌てて離れた。辺りを見渡すと、カバンが積み上がっている横に誰かが眠っていた。

「あ、だだだだだれだろ…」

「ドモりすぎ」

「そそそんなことない！」

オレから距離をとってると、教卓にぶつかったAに笑みが溢れた

またあとで、でいいか