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フィナーレにふさわしい 3 ページ36

Y side



思わずキッドを見上げて、その顔を凝視する。


「ん?バラは好きじゃねェのか?」

「ほんとに、新一?」


癖っ毛のある髪の毛、どこか新一を感じさせるあの男の子に、彼は良く似ている。

でもあの時の彼は私と同い年に見えたし、キッドがそんな若いはずがない。10年以上前にも存在していたと聞いていたから。


…ああ、これも変装か。



「…なんだ」


腑に落ちた私にキッドが疑問そうな顔で覗き込んできた。


「あなた新一じゃないのね」

「……ええ、やっと気付いて頂けましたか」

「見事に騙されました」

「どこで偽物だと?」


離れた距離を縮めてきたキッドに少し戸惑いながら彼の質問に答える


「えと、スーツ姿を見た時かな、自信持って新一だって思えなくて…確信したのはバラを貰ってすぐ、」

「ホォー、なぜ?」

「ふふ、あなた前にもわたしにこのバラを渡してるの」


そういうと、驚いた顔をしたキッド。紳士的な彼のことだから、俯いていたり悲しい顔をしている人をマジックで笑わせてあげようとする人なんだと思う。

だからたまたまあそこに居た私に、同年代の子に化けて、バラを渡してくれたんだ。


ポーカーフェイスを忘れて考え込んだ彼に思わず笑ってしまう。それに気付いた彼は恥ずかしそうに笑って、忘れてしまってごめんなさいと謝られた。


あまりない2人の距離を私から一歩埋めてみた。
小さい頃に見た、映画のワンシーン

向かい合ってる男女が、徐々に近づいていって、女の人が男の人の頬を撫でる。その手の上から男の人が手を重ねて、2人は口付けを交わした


もうこんな機会はないだろうと、存分にキッドで試したい。


彼の頬に手を伸ばし、言葉を紡いだ


「でも、ありがとう…久しぶりに新一の顔が少しでも見れて嬉しかったの私。あの時は、全然こっちなんて向いてくれてなかったけど」


少しの捻くれも交じれつつ、彼の目を見つめる。戸惑いの目をしていたのに次第にその目は色が変わったような気がして、そのまま腰を引き寄せられた


「ひっ…?!」


その行為に可愛い声なんて出せず、腰と後頭部に回された手に意識を取られて、顔が近づいてることなんて気にならなかった。






「A!!」





少し離れた向こうからコナンくんの私を呼ぶ声が聞こえる。…まってあの子呼び捨てにしたよね

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作者名:えむ | 作成日時:2020年5月4日 22時

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