【テニプリ】副会長ですが何か。2

合宿3日目11-暇人による暇潰し ページ8

(……暇だ、)

ベッドにごろんと寝転がったまま、ぽつりと思う。

何もする事がない。今まで書類に追われていた所為で、碌な事もせずに毎日を過ごしていたんだなぁと改めて感じる。たまにはぼーっとするのも良いかと午後練のこの時間、何処にも行かずに与えられた自室に籠もったはいいが、本当に何もする事がなくて少しビビっている。書類をこなす事だけで毎日を過ごしていた自分に。

『…あ、』

窓の外から何やら物凄い音がするのでバンと開けてみると(洒落た両開きの窓だ)、真下がちょうど立海の練習コートになっていた。今頃気付いた。すると、私が窓を開けた事に気付いたのか、数人が此方を見上げた。あの手を振っているのは赤也くんだ。

「Aさぁぁぁん!!!何してんすかー!!」

『暇だから部屋に籠もってたのー!!』

赤也くんとのやり取りで下にいた全員が私に気付き、何故か私の『暇』発言を目敏く聞いていたらしい丸井くんが、「暇なら何かおやつでも作ってくれよーい!!」と叫んできた。うーん、お菓子作りならまあまあ出来る自信があるなぁ…。

『良いですよー!何か希望はありますか?』

「っべ、別に何でも「俺はAさんの作ってくれたものなら何でも良いですよ!!」!?っ赤也テメェ……幸村くん、」

「ふふ、赤也。外周10周行ってらっしゃい」

「え!?」

「 行 っ て ら っ し ゃ い 」

うわ幸村くんこわ…有無を言わせない笑みに赤也くんはビクッと震えた後、無言で外周を走りに行ってしまった。何だろう、此処からじゃ見えない筈の冷や汗が見えた気がした。当の幸村くんは「10周だなんて俺優しいね」とニコニコしながら真田くんに話しかけている。立海…やはり恐るべしである。

そんな物騒な雰囲気にそぐわない爽やかさをたたえた丸井くんが期待の眼差しで此処を見上げているので、思わずうっと言葉に詰まる。何も悪い事してないのに。

『っじゃあ、何か作って来ますね!!…あ、持って行った方が良いですか?』

「あぁ、頼むぜい」

シクヨロ、と片目を瞑りご丁寧にピースまで添えられた完璧な丸井くんのポージングにふふ、と笑いが溢れながら『では、また後で』と窓を閉めた。

お昼の時間にちゃっかり景吾くんと交換しておいたSNSの個人チャットに[何処かお菓子作りができる場所はありますか?]と打つ。画面の照明を落として仕舞おうとするとすぐさま震えたそれに吃驚しつつメッセージを確認する。案の定彼からで、あれ返信が早い…ちゃんと練習しているのかなと気になった。

合宿3日目12-伊達眼鏡さんと遭遇→←合宿3日目10-かわいそうな副部長

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す