合宿4日目5-読めない天才 ページ20
誰か嘘だと言ってくれ。まじで。
呆然とした表情だろうそのまま『…分かりました』と電話の向こうの鈴木先生に短く告げ、スッと通話をオフにした。絶対顔死んでるでこれ。スマホを持ったままだらんと力の抜けた私の腕と顔を吃驚した顔で交互に見やる不二くんには悪いが、正直今は何も話す気になれない。
それほどまでにこのショックは大きい。この2日間は書類とは無縁の生活を送ることができたのに。思わず顔を両手で覆うと、それはそれは深いため息が漏れた。
「…Aちゃん、良ければボクに話してくれないかい?」
『不二くん…』
顔から手を離すと、いつの間に近くにいたのか不二くんは私の両手を取り、ぎゅっと握った。不二くんにそこまでされて黙っているのは駄目だよね。
『…“迎えに行くから荷物まとめとけ”だって』
「っ!!…一緒に帰れないんだね」
『そういう事になるね…はぁ』
いや、どっちかと言うと、一緒に帰れないという事よりも帰ってからまた書類に1日の大半を持っていかれる生活に戻りたくないのであって、こう言っては悪いが別に一緒に帰れないくてもいいんだけど、である。ていうかさっき何となく手塚くんと暫く会えない気がしたけどこれの事かよ!!なにこのオチ!!!
『…ごめんね不二くん、そろそろ戻るね。…あ、言いかけてた事って何?』
「いや、大した事じゃないから。さあ、戻ろうか」
『うん』
どうやら不二くんは一緒に着いてきてくれるようだ。そんな事までしなくていいのに、と思うが、多分というかほぼ確実にこの人は結構頑固なところがあるから、着いて来なくていいよと言ったところで自分の意見を曲げたりはしないだろう。
戻る途中で運よくルナが日向ぼっこをしているのを不二くんが見つけてくれて急いで回収(ルナは不服そうだった)しているうちに、部屋の前まで送ってもらってしまった。わざわざごめんねと言うと、不二くんはにっこり笑って「ボクは君の申し訳なさそうな顔じゃなくて、笑顔が見たいな」と言われてしまった。
『ありがとう、不二くん』
「うん、それだよ。…次は、ボクたちが帰るまで会えないね」
『数日空くだけだよ?大袈裟な、「ボクにとっては大袈裟じゃないよ」…えっ』
不二くんはそう言うと、最後に「じゃあね」と私の頭を撫でるとそのまま長い廊下を戻っていった。
『…?』
不二くんって時間の流れをゆっくりに感じる人なのかな。
色々考えても無駄な気がしたので、不二くんが向こうの角を曲がりきる前にドアを閉めた。
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リー - 続きお願いいたします。 (2017年7月21日 0時) (レス) id: d528214b0c (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます!!!これからも面白いと言っていただける小説を目指して更新頑張ります♪( ´▽ ` ) (2015年10月31日 23時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - とっても良いですね!面白いです(o^^o) 更新、楽しみにまってますね^ ^ (2015年10月31日 23時) (レス) id: c1b9c7629a (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - コメントありがとうございます!!!面白いと言っていただけて、とても嬉しいですo(^▽^)o更新頑張ります!! (2015年10月31日 22時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
にろか。 - 初コメ失礼します!!┏oペコすっごく面白いですね!(*´罒`*)いい作品になるよう(((←いやもうなってんだろこれからも期待してます!更新楽しみに待ってますっ(*´-`) (2015年10月31日 21時) (レス) id: 8b4603215a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽよ* | 作成日時:2015年6月1日 1時