合宿3日目16-回り出す歯車 ページ13
張り詰めていた空気を震わす、決して大きくはないのによく響いたその声の持ち主__幸村くんは、私を一瞥した後再び口を開いた。
「陰野さん差し入れありがとう。俺が受け取るよ」
『あ、はい』
いつの間にか緩められていた赤也くんの腕から抜け出し、そのまま幸村くんにカゴを渡す。ちら、と振り返ると赤也くんは放心したように何処かをぼんやり見つめているようだった。丸井くんは見当たらず、恐らく何処かへ行ってしまったのだろう。何となく気まずさを感じていると、幸村くんが徐ろにカゴからエナジーバーを取り出して食べ始めた。もぐもぐしていて、不謹慎にも可愛いと思ってしまった。
「!…美味しい」
『そうですか!良かった…』
「お、俺も貰って良いだろうか」
もぐもぐしている幸村くんを見てか、真田くんがやってきた。勿論、と笑顔で了承すると嬉しそうに食べ始める。最初は怖そうだと思っていたが、やっぱり彼もまだ中学生だったのだなぁ、なんて若干失礼な事を考えていると、「では俺も頂こう」と言った柳くんを筆頭に、他の人たちもぞろぞろと集まってくる。皆何処かしらそわそわしているのが見てとれ、何だか面白い。
(あ、丸井くん、)
辺りを見回すようにきょろきょろと視線を泳がせながらやってきた丸井くんは、私が見ている事に気付いたのか、あっ、という顔をして立ち止まった。此方も気まずいが、このままずっと気まずいのはもっと嫌なので、『あの、』と話しかける。まさか話しかけられるとは思っていなかったのか丸井くんは吃驚していたが、口をぎゅっと結んだかと思うと私に向かって勢い良く頭を下げた。
「ごめん!!!」
『えっ!?な、何で謝るんですか!顔を上げてください!!』
顔を上げた丸井くんは、申し訳なさそうな表情のまま続けた。
「…赤也の事、吃驚しただろ」
それに、俺の事も…何となく分かっちまったよな。と溢す丸井くんに、咄嗟に『そんな事ないですよ!!』と制止をかける。
「え?」
『あ、いや、その…吃驚してないと言ったら嘘になるんですが、丸井くんが謝る必要はありません』
「…」
『“Gravitation is not responsible for people falling in love.”という言葉があります。“人が恋に落ちるのは重力のせいではない”という意味なのですが、つまり、誰かを好きになるという事は決して必然ではなく…奇跡のようなものなんです』
だから、恋をした自分を責めないでください。
そう言うと、丸井くんは俯いたまま動かなくなってしまった。
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リー - 続きお願いいたします。 (2017年7月21日 0時) (レス) id: d528214b0c (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます!!!これからも面白いと言っていただける小説を目指して更新頑張ります♪( ´▽ ` ) (2015年10月31日 23時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - とっても良いですね!面白いです(o^^o) 更新、楽しみにまってますね^ ^ (2015年10月31日 23時) (レス) id: c1b9c7629a (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - コメントありがとうございます!!!面白いと言っていただけて、とても嬉しいですo(^▽^)o更新頑張ります!! (2015年10月31日 22時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
にろか。 - 初コメ失礼します!!┏oペコすっごく面白いですね!(*´罒`*)いい作品になるよう(((←いやもうなってんだろこれからも期待してます!更新楽しみに待ってますっ(*´-`) (2015年10月31日 21時) (レス) id: 8b4603215a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽよ* | 作成日時:2015年6月1日 1時