合宿3日目15-2年生エースの心中 ページ12
私が柳生くんを引き連れて練習コートに到着すると、ちょうど休憩時間になったようで、真っ先に私を見つけたらしい赤也くんが私の名前を呼びながら走ってきた。一瞬犬かと思った。慌てて目を擦っているとふと後ろに陰が射す。振り返ると、大分近いところに柳くんが立っていた。今度は慌てて後ずさる。
「陰野、何故俺から逃げるんだ」
『うっ…助けて赤也くん』
「えええええ」
柳くんを見るとさっきの出来事を思い出してしまい、私が勝手に恥ずかしくなっているだけなのだが、言ったところで止めてはくれないだろう。柳蓮二という男は。
私はただ丸井くん(と立海の人たち)に差し入れを持って来たのであって、こんな質問責めになりそうなところに自ら首を突っ込みに来た訳ではないのだ。赤也くんを盾にして柳くんとの距離を少しでも空けようと無駄な足掻きをしているのを見た柳くんは、私に近付くのを諦めたものの、あのノートを取り出し何か書き込み始める。もう何なの。
「あっ陰野!!待ってたぜ!!」
『丸井くん!』
とそこへ、救世主丸井くんが現れた。神が降臨したも同然な思いで自然と笑顔になる。赤也くんの背中から離れて、持っていたカゴを丸井くんに渡そうとするが、がくんと急にその動きが制限される。何が起こったのか理解できないまま取り敢えず自由な首だけを動かし、後ろを振り返る。
『赤也くん…?』
「……」
此処で漸く私は赤也くんに抱き締められている事に気付く。168cmの彼の身長は、私では見上げないと顔をきちんと見る事ができないので、大分無理な首の動かし方をしつつ赤也くんを見上げる。だが赤也くんは私が見ている事に気付く様子がなく、じっと一点を睨み付けている。その視線を辿っていくと__そこには丸井くんが目を見開いて固まっていた。
「…丸井先輩、」
「…っ何だよい」
赤也くんが大きく息を吸ったのを感じる。
「…俺、テニスも…Aさんの事も、負けませんから」
「っ!!」
『!!』
__Aさんの事も、負けませんから。
それが何を意味する言葉なのか、分からない程私は子供じゃない。自惚れている訳ではないが、そうとしか考えられないのだ。私は何かしただろうか。普通に赤也くんに接してきた筈。いや、よく考えたら出会いが普通じゃなかった。そういえば最初は物凄く嫌われてたな…色々勘違いされてたし。
そんな事を考えていた私の耳に、突然パァンと小気味良い音が響いた。
「はい、そこまで。喧嘩なら他所でやってくれるかな?」
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リー - 続きお願いいたします。 (2017年7月21日 0時) (レス) id: d528214b0c (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - みかんさん» コメントありがとうございます!!!これからも面白いと言っていただける小説を目指して更新頑張ります♪( ´▽ ` ) (2015年10月31日 23時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - とっても良いですね!面白いです(o^^o) 更新、楽しみにまってますね^ ^ (2015年10月31日 23時) (レス) id: c1b9c7629a (このIDを非表示/違反報告)
ぽよ*(プロフ) - コメントありがとうございます!!!面白いと言っていただけて、とても嬉しいですo(^▽^)o更新頑張ります!! (2015年10月31日 22時) (レス) id: b876b60e24 (このIDを非表示/違反報告)
にろか。 - 初コメ失礼します!!┏oペコすっごく面白いですね!(*´罒`*)いい作品になるよう(((←いやもうなってんだろこれからも期待してます!更新楽しみに待ってますっ(*´-`) (2015年10月31日 21時) (レス) id: 8b4603215a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽよ* | 作成日時:2015年6月1日 1時