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「…どうしたら、いいの」
向かい合う、目の前の相手は紛れもなく優太くんだって分かっている。
けれど、レンズを通して注がれるそれが、まるで知らない目に見つめられているみたいに思えた。
「普通にして」
「普通って、」
「んっとね、じゃあ歩いてて」
少し離れた距離にいる優太くんの方へゆっくりと足を進める。
その間にも何度かシャッター音が鳴る。
恥ずかしい。
なんだこれ、ものすごく恥ずかしいぞ。
ただ歩くそれだけなのに、その動作さえ何だか下手くそになっている気がした。
歩いて、と言われると普段自分がどんなふうに足を動かして歩いていたかすら分からなくなる。
何かそういう寓話があったな。何だっけ。
あ、そうだ。
“ムカデのダンス”。
踊りの上手なムカデが「どんな風に足を動かしてダンスを踊っているのか教えて」と言われて、生まれて初めて自分の足の運びについて頭で考えた途端に、それまで自然にできていたダンスが分からなくなってしまう、みたいな話。
「何考えてる？」
おかしな顔をしていたかもしれない。
優太くんが私に聞く。
「え、あ、ムカデのこと、」
「えっ気色わる！なんで？好きなの？」
「いや、嫌い…」
俺もムカデは無理だなぁと言いながら、優太くんがまたシャッターを切る。
なんてへんてこな会話だろう。
主に私のせいなんだけど。
そもそもだいたい写真なんて、普段はスマホのカメラレンズに向かって友達と撮ることくらいしかほとんどない。それは意識して表情をつくってシャッター音が鳴るのを待つというものだ。こんなにもあからさまに私だけに向けられている視線を意識することなく、自然に、普通に過ごすなんて、したことがないし無理だと思った。
緊張して硬い表情になっているのが自分でも分かる。
歩く動作もいかにも恐る恐るという感じで格好悪い。
向いてない、と思った。
あの日の菫ちゃんみたいに、カメラの存在を少しも気にしていないみたいに、他の誰にも壊すことのできない自分だけの世界をそこにつくりあげるみたいに、自由に動き回ることなんて私にはできない。
そんなのでよく彼女と同じ事務所に履歴書なんて送ったものだ。勢いって怖いと、我ながらそう思った。
「 笑ってもいいし、笑わなくてもいいよ」
被写体が思っていたよりもずっとポンコツでがっかりしていないだろうか。
そう思っていたのに優太くんの声はあまりにも優しかった。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします！ (2018年6月17日 18時) (
レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました！！見られるようになりませんか？涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます！この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…！多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜！ (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです！！諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます！ (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます！3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜！これからもよろしくおねがいします！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2018年1月3日 11時
