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買ったばかりのスカートがなかなか見当たらなかったのも、チークが少し濃くなってしまったのも、前髪が上手く巻けないのも、夜明けまで続いた冒険のせいだろうか。
未だどこか浮かれたままの気分が朝の準備にさえ支障をきたして、時計の針はあっという間にもう出なければならない時刻を指していた。
騒がしい足音を響かせて駆け降りた階段の先で、リビングから笑い声が聞こえ足を止める。
父と母と弟。家の中にいつも存在する声と、もう一つ別のそれ。
けれど聞きなじみのある、柔らかなその声。
「勇太くん！？」
これから会いに行くはずの相手、勇太くんが我が家のリビングで家族と談笑していた。
驚きのあまり持っていた鞄と携帯と化粧ポーチが両手から滑り落ち、床にぶつかって音を立てる。
どうしてうちにいるんだろう。どうしてこの島にいるんだろう。勇太くんは本土の港で待ってくれているはずだった。
「船着き場、早めに着いたからもう乗っちゃった。久しぶりにご挨拶したかったし」
ソファを立ってこちらへ歩いてくると、私の手から落ちたものを一つ一つ拾い上げて渡してくれる。今一つ状況の飲み込めていないままにそれらを受け取ると、勇太くんが両親の方へ向き直った。
「Aちゃんのこと、一日お預かりします」
そう言って彼が姿勢正しく礼をする姿を見ればすぐに、たまたま早くに着いたから、だなんて嘘だと分かる。数か月ぶりに二人で出かける今日、きっと、私の家族に心配をかけないようにとわざわざ挨拶をするために来てくれたのだ。
完璧だ。
勇太くんはいつも、どこまでもちゃんとしている。
そもそも勇太くんと一緒なら心配なんてかかるはずがないというのに。
「勇太くんに失礼がないように」と私に釘を刺す面倒な父にも、「もう行っちゃうの？」と完全に勇太くんに浮かれた状態の母にも、「勇太くんお土産！」なんて図々しい優斗にも、勇太くんは笑顔で返す。
我が家の人間はみんな、勇太くんのことが好きで、それは偏に彼の誠実さによるものだった。
「おはよう。驚かせてごめんね」
「ううん、迎えに来てくれてありがとう…！あ、おはよう！」
本当に、驚きはした。
だからなのか、久しぶりに顔を合わせるからなのか、何だか不自然になってしまった返答に勇太くんが笑った。電話やラインではやり取りしていたけれど、こうして会うのとはやはり全然ちがうなと思った。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします！ (2018年6月17日 18時) (
レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました！！見られるようになりませんか？涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます！この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…！多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜！ (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです！！諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます！ (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます！3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜！これからもよろしくおねがいします！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2018年1月3日 11時
