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電話は繋がらないし、ラインも既読にならない。
何度か家を訪ねインターフォンを鳴らしたけれど、厳重なセキュリティが解除されることは一度もなく、エントランスホールに入ることさえできなかった。
もちろん、店にいらっしゃることもない。
「送って行きましょうか」
考え事をしていたら、帰りの支度が随分ゆっくりになってしまった。
いつの間にか顕嵐くんと二人きり。
「どうして？」
「なんかぼーっとしてるから、車に轢かれそう」
「ありがと…、轢かれないから大丈夫」
「太客逃すとショックなもんですか」
…きっと、彼なりに心配してくれているのだとは思う。
相変わらず言い方はあんまりだけれど。
あれからずっと、紫耀さんのことを考えている。
そのために業務中も意識が散漫なことは、きっとここの誰の目にも明白なのだと思う。
良くないって分かってる。
私のお客様は紫耀さんだけではない。
「…君は言葉を選ばないよね」
「意外だなぁと思って」
「何が？」
「Aさんがショック受けてるのが。平野さんはそりゃまぁいいお客さんでしたけど。Aさんでもそんな風になるんだなぁって」
本当に、少しも言葉を選んではくれないから困る。
けれど顕嵐くんの言う通りだと思った。
私も今、自分で自分の動揺の具合に驚いている。
紫耀さんにとっての私とは何か、ずっと弁えていたつもりだ。
それも今ではよく分からなくなったけれど、それを置いておいたとしてじゃあ、私にとっての紫耀さんとは、なんだったんだろうか。
"良いお客様"ではなかったのか。
彼が与えてくださる報酬以上の、一体何を私は求めていたんだろう。
それともこんな風に引きずっているのは、あんな目を見てしまったから、だろうか。
あの日の紫耀さんが、まるで助けを求めるような苦しげな表情が、瞼の裏に焼き付いていた。
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こむぎ(プロフ) - ひだぴよさん» 一番だなんて、ただただ嬉しいです…！ありがとうございます！読み返して頂けているということも、とてもとても幸せなことだなぁと思ってます。すっごくモチベーションあがりました！これからも書き続けるので、お付き合い下さると嬉しいです〜！ (2017年9月5日 0時) (
レス) id: ee18da60f7 (このIDを非表示/違反報告)
ひだぴよ(プロフ) - はじめましてコメント失礼します！私が読んだことある作品の中で一番このお話が大好きです！更新されていなくても何回読んでも飽きないので読み返したり更新された時はドキドキしながら読ませてもらっています！これからも頑張ってください！ (2017年9月4日 0時) (レス) id: c4715235be (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - aさん» えーありがとうございます！ここにはたくさん素敵なお話があるので、私などの話で初めて感想を書こうと思って下さったということ、本当に嬉しすぎます…！喜ばせ上手ですね…惚れそうです… これからも楽しみにしていただけるようなものが書けるよう頑張ります〜！ (2017年8月22日 1時) (レス) id: 575451942f (このIDを非表示/違反報告)
a(プロフ) - なんといったらいいのでしょうか…それはそれはもう本当に素敵なお話で胸がいっぱいになります。ここに感想を書こうと思ったのも初めてでそれくらい感銘を受けました。これからも更新を心から楽しみにしております！ (2017年8月21日 7時) (レス) id: 1755795bcf (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - みうさん» ありがとうございます！私の選んだ一つ一つの言葉で色んなことを考えて頂けてるなんて、すごく嬉しいです…私こそみうさんからのコメントにテンションがあがりました！ そんな風に言っていただけるのなら大変な気持ちなんて全くないです〜これからも頑張ります！ (2017年8月21日 1時) (レス) id: 575451942f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2017年7月9日 14時
