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Ren
彼女の手をすり抜けた小銭が床にぶつかって音を立てる。
すぐさまレジから出てくると必死に謝りながらそれらを拾い集め、もう一度頭を下げて客を見送った。
ふと視線がぶつかる。
一部始終をこの席から見ていた俺たちに気が付き、Aさんはばつが悪そうに笑った。
「何かひどなってない？」
「うん。気にしなくていいよ」
幸せボケじゃない？と突き放すようにそう言って海人はコーヒーを口に運ぶ。
重度のシスコンのくせにこいつなりに必死に姉離れをしようとしているのかと思うと、面白くてちょっと同情した。
けれど、海人のことを思いやってやる余裕はそんなにない。
今日は、俺にとってのけじめの日だった。
幸せボケ、ね。
ここ最近彼女を悩ませていた胸のつかえがとれたのだという。
詳細は分からないけれど、多分それは平野紫耀が理由だと海人は言った。
もとより平野紫耀にしかできないことだったのかもしれない。だけど悔しく思う。
海人と二人あの男のところを訪れて、まぁ特に何をしたわけでもないけれど、もしかしたらそのことも彼女と平野紫耀の関係を変える手助けになっていたのかもしれないと思うと少しやりきれなかった。
無意識のうちに視線がAさんのことを追っていると、再び目が合ってまた彼女が恥ずかしそうに笑う。
それでも、彼女の心を痛め続ける棘がなくなったのなら、それは嬉しいのだ。
Aさんは翳りのない笑顔がやっぱり素敵だと思った。
「で、お前は何しに来たん」
「面白そうだなって」
「…まさかやけど、ついて来んよな？」
Aさんとは、この後時間をもらう約束をしていた。
彼女の仕事が終わるのをここで待っているわけだけど、それは別に俺一人でよかった。
なぜだか一緒についてきた海人は、俺の問いかけに、まさか、と言って笑う。
どうにも信用ならない。面白がっていた。
「まぁどっかで時間つぶしてるから、終わったら連絡して。スタバ行こう」
「慰める準備すんなや」
「大丈夫。廉の奢りだから」
気遣いなのか本当にただ面白がっているだけなのか分からない海人を小突いて、一度大きく伸びをした。
彼女と話をした後の自分がどうなるか、大体分かっているのに、それでも不思議と心は穏やかだった。
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#Love(プロフ) - とっても素敵なお話でした。1日かけて全部読んじゃいました。続き見てみたくてフォローリクエストさせて頂きましたー。 (2020年4月19日 17時) (
レス) id: 6a06178345 (このIDを非表示/違反報告)
かの(プロフ) - これのほくてぃー最高すぎ、無理、好き。できればほくてぃーおちこの作品でもちがくてもいいので見たいなあ、なんて( ；；) (2019年4月24日 21時) (レス) id: 500512ebdb (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 続きが気になって一気読みしてしまいました！号泣しながらなんて文才！ってなりました。また違う作品も期待してます☆ (2019年4月21日 2時) (レス) id: 60f0de0514 (このIDを非表示/違反報告)
Ree(プロフ) - 初めまして。最後まで読ませて頂きました！この作品の北斗が最高に好みで、悶えるほどキュンキュンさせていただきました笑次はぜひこのままの性格でリアル設定の北斗が主人公の作品も見てみたいです！よろしくお願いします。 (2018年10月23日 18時) (レス) id: b39ecec93d (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ららちゃんさん» 最後までお読み下さりありがとうございます！自分でも何とも言い難い話だなあと思うのですが、大好きと言って頂けると本当にとっても嬉しいです！こちらこそ出会って下さりありがとうございました。今連載中のものもあるので、よろしければそちらでもお付き合い下さい〜 (2018年8月30日 23時) (レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2017年11月3日 23時
