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紫耀さんの掌が、頬に触れる。
顔がゆっくりと近づいて、そっと目を閉じる。
唇が、優しく触れ合う。
背筋に小さく電気が走るような、甘い痺れ。
嬉しくて、苦しくて、気持ちよくて一瞬で何にも考えられなくなる。
たった数秒。
重ねただけの唇から、紫耀さんの温かさが全身に伝わって涙が出た。
心が、魂が、彼を好きだと言って震えるのだ。
キスなんて何度もしたことがあるのに、それまで交わしたものとは全然ちがう。
これほどの幸福に触れたのは初めてだ。
まるで今この瞬間のために生まれてきたような気さえするくらい、そのくらいに幸福なキスだった。
「…好きです、紫耀さん」
海人さえ幸せであればいいと願った日も、自分には恋ができないと諦めた日も、自身の欠落を悲しんだ日も、まるで今この時の幸せに出会うためにあったかのようだ。
「俺の方が好きだよ」
だって本当は、私が幸せになりたかった。
私が恋をしたかった。
そうして、私が恋をするその人のことを、幸せにしてみたかった。
首に手を回して、もう一度キスをする。
今まで私自身を通り抜けたもの全てが、紫耀さんと恋をするためだったのなら。
離れれば、愛おしさを少しも隠すことのない視線で紫耀さんが微笑んで、それがたまらなくくすぐったい。
恋人。
私の恋人。
たまらなくなって、ぎゅっと抱きついた。
「解けたかな」
胸に埋めた頭の上で、紫耀さんの声がする。
「…なんですか？」
「キスしたら、解けるんやって。呪いとか、魔法とかね、いろいろ」
笑ってしまう。
おとぎ話の中みたいに光り輝く世界を背景に、王子様みたいに綺麗な顔をしてそんなことを言うものだから。
ロマンチストなのね、と私が言う。
そうかもね、と彼も笑った。
そうしてできる目元の笑い皺が、世界で一番愛くるしいものに思えた。
END
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#Love(プロフ) - とっても素敵なお話でした。1日かけて全部読んじゃいました。続き見てみたくてフォローリクエストさせて頂きましたー。 (2020年4月19日 17時) (
レス) id: 6a06178345 (このIDを非表示/違反報告)
かの(プロフ) - これのほくてぃー最高すぎ、無理、好き。できればほくてぃーおちこの作品でもちがくてもいいので見たいなあ、なんて( ；；) (2019年4月24日 21時) (レス) id: 500512ebdb (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 続きが気になって一気読みしてしまいました！号泣しながらなんて文才！ってなりました。また違う作品も期待してます☆ (2019年4月21日 2時) (レス) id: 60f0de0514 (このIDを非表示/違反報告)
Ree(プロフ) - 初めまして。最後まで読ませて頂きました！この作品の北斗が最高に好みで、悶えるほどキュンキュンさせていただきました笑次はぜひこのままの性格でリアル設定の北斗が主人公の作品も見てみたいです！よろしくお願いします。 (2018年10月23日 18時) (レス) id: b39ecec93d (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ららちゃんさん» 最後までお読み下さりありがとうございます！自分でも何とも言い難い話だなあと思うのですが、大好きと言って頂けると本当にとっても嬉しいです！こちらこそ出会って下さりありがとうございました。今連載中のものもあるので、よろしければそちらでもお付き合い下さい〜 (2018年8月30日 23時) (レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2017年11月3日 23時
