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「あのね、紫耀さんも私も、お互いのことをどうしていいか分からないし」
Aが口を開く。
齧ったどら焼きの断面に見える餡を見つめて、その先の言葉を迷っているのか少しの間だけ無音の時間が流れる。
「とりあえずなんですけど」
「うん」
「デートをしませんか」
「…なんか、わりと強引になってきたよな」
「嫌いですか？」
薄茶色の瞳が見据える。
何度目でも、俺はばかみたいにそこから目を逸らすことしかできなくなる。
「…そゆこと聞かんで。次、言ったらすぐ出てかせるから」
問いかけにたじろぐ俺を見て、嬉しそうにAが口角を上げた。
俺が彼女のことを、例え嘘でも“嫌い”だと言えないことはもうあの晩に知られてしまっている。
分かってて聞いてくるAはずるい。
“お互いのことをどうしていいかわからない”
Aが言ったそれは、このうえなく微妙な距離にいる俺たちの状態を表す言葉として間違ってはいなかった。
けれどそもそもの話、“どうにかする”という選択肢自体俺の頭にはなかった。
俺にとってのAとは、俺なんかが触れることの許されない大変にきれいな生き物で、決して手を伸ばしてはいけない光だったから。
途中ずるをしたこともあったけれど、大原則としてそれは、崩されざる絶対だったはずだ。
「…なんで、そんななん」
「そんなって？」
「俺の話聞いて、気色悪くならんかったの」
「えぇ？」
「…同情やとしても、そんな…、Aちゃんの方から歩み寄ってくる意味が分からん」
「うーん、まぁ、」
「……」
「まぁ、好きになったので」
何でもない事かのように軽く放たれたそのたった一つの言葉で、俺の心がどんなふうになるのか、どれだけめちゃくちゃのぐちゃぐちゃになるのか、きっと想像もつかないのだと思う。
気まぐれや勘違いならどうかやめてほしい。
「…何も覚えてへんくせに」
女々しいことを言った。
彼女と距離をとるための言葉を態度を、ずっと探している。
どんなにそうしようと思ってもどういうわけか彼女の方からこちらに寄ってくるものだから、もはやそんな女々しいことを口にするしかないのだ。手段は選んでいられない。
だって、そうすべきだから。
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#Love(プロフ) - とっても素敵なお話でした。1日かけて全部読んじゃいました。続き見てみたくてフォローリクエストさせて頂きましたー。 (2020年4月19日 17時) (
レス) id: 6a06178345 (このIDを非表示/違反報告)
かの(プロフ) - これのほくてぃー最高すぎ、無理、好き。できればほくてぃーおちこの作品でもちがくてもいいので見たいなあ、なんて( ；；) (2019年4月24日 21時) (レス) id: 500512ebdb (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 続きが気になって一気読みしてしまいました！号泣しながらなんて文才！ってなりました。また違う作品も期待してます☆ (2019年4月21日 2時) (レス) id: 60f0de0514 (このIDを非表示/違反報告)
Ree(プロフ) - 初めまして。最後まで読ませて頂きました！この作品の北斗が最高に好みで、悶えるほどキュンキュンさせていただきました笑次はぜひこのままの性格でリアル設定の北斗が主人公の作品も見てみたいです！よろしくお願いします。 (2018年10月23日 18時) (レス) id: b39ecec93d (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ららちゃんさん» 最後までお読み下さりありがとうございます！自分でも何とも言い難い話だなあと思うのですが、大好きと言って頂けると本当にとっても嬉しいです！こちらこそ出会って下さりありがとうございました。今連載中のものもあるので、よろしければそちらでもお付き合い下さい〜 (2018年8月30日 23時) (レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2017年11月3日 23時
