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「制服と鞄、持ってきた」
Aちゃんの話を聞いて、正直に言えばかなり驚いた。けれどその動揺を表に出さなかったのはそれが、岸くんを好きだと思う気持ちはおかしなことだって、今自分自身を責めているあの子をさらに深く傷付けることになると思ったからだ。
でもそんな、隠そうと思えばそうできるほどの俺の些細な動揺なんて目の前のこの人のそれとは比べものにもならないんだろうなと思った。
玄関先、めちゃくちゃに思い詰めた顔をして立っている。
数ヶ月前からうまくやれていないというようなことは聞いていたけれど、事態は思った以上に複雑だった。
「朝起きたら普通にそっち連れてこうと思ってたのに。どうも」
寝室で寝ているAちゃんを起こさないようにと、声のボリュームを落として話した。
鞄と、制服一式の入った紙袋二つを岸くんから受け取る。受け取るけれど、岸くんはそこに立ったまま動かなかった。何か言いたいことがあるんだろうと待っていると申し訳なさそうな顔をして言う。「俺もここにいていい？一晩」と。
「え？いいけど。Aちゃんと話すの？」
「や…、起こさないで。Aが起きる前には出てく」
「どういうこと？」
沈黙。
別に泊めるのが一人だろうと二人だろうとそう変わらないけれど、意味が分からない。車で来たんだろうから普通に今から帰るのになんの支障もないだろうし、Aちゃんに会いに来たわけじゃないんだったら岸くんが一晩うちにいる意味とは。
考えて、ふと思い至る。
「待って、岸くんマジで俺がAちゃんに手出すと思ってる？」
「……」
「出さないって。どんだけ信用ないの俺」
そりゃ確かに、岸くんの立場としては20代の男の家に自分の娘を一晩置いておくのは不安かもしれない。
けれど全くの善意だ。心配以外の気持ちなんて微塵もない。
そこを疑われると、多少は文句も言いたくなった。
岸くんの眉が八の字になる。
打ち萎れたような弱々しい声で「ごめん」と言った。
「出さないって思ってるよ。お前はそういうやつじゃないよ…、」
目元を指で押さえて俯く。
「けど、もう分かんないんだよ。俺だって本当はそういうやつじゃないはずなんだよ……」
大きな手のひらで顔を覆う。
その指の隙間から見えた顔が心底参ったというような表情で、辛そうで苦しそうで、何だか文句を言う気も失せた。
けれど引っかかる。
俺だって、と言った。
俺だって本当は、と。
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小袖(プロフ) - 良すぎてぶるキュンしました😭どの作品もとても読みやすくて、心情や情景の書き方もとても上手でほんとに素敵です！続きが気になります！ (2022年6月29日 17時) (
レス) id: 086580d8cf (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - 更新嬉しいです！新しい岸くんと娘ちゃんの形、ドキドキします！これからも楽しみにしてます。 (2020年11月24日 0時) (レス) id: 13ab7dce5a (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 更新楽しみにしてました！岸くんの変化にキュンキュンです！何度も何度も読み返したくなる素敵な作品。2人がラブラブになるの楽しみにしてます！ (2020年11月18日 20時) (レス) id: 5ef92e91e3 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 更新ありがとうございます！待ってました！はぁ…すごく嬉しいです。幸せな岸君と娘ちゃんに、嬉しくて、なんだかくすぐったいような…。幸せのお裾分けをいただいています。2人が恋人になる日が待ち遠しいです。 (2020年11月18日 18時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - ついに！ついに岸くんが！！！わぁー、やっとですか！でもそんなに我慢できる！？はやく求めてほしいな…続きも楽しみにしています♪ (2020年9月30日 7時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年11月11日 19時
