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「偶然見かけて、帰りたくないって言うからうちにつれてきた」
「……ごめん。悪い、マジで。ありがとう」
「いや全然いいけど」
俺の身の回りで最も安心な大人に拾われるというその奇跡的なまでの偶然に、安堵の溜息を吐き出した。
おかしなことになっていなくてよかった。本当に。
「とりあえず一晩は預かるよ」
本当によかったと、そう思って。
面倒をかけて申し訳ないなと、そう思って。
ありがとうと礼を言おうと、思って。
そこでふと、思い出す。
『私がどこでどう処女を失っても優太くんには関係のないことだから』と言われたこと。
本気じゃない。きっとあの時癇癪を起こして、勢いに任せて放っただけの言葉でAはそこまでバカじゃない。
でも、Aは神宮寺のことが好きだった。随分小さい頃の話だけど、それを持ち出せば「いつの話だ」と反論されたりもしたけれど、その感情がいつまで続いていたものなのかを俺は知らないし。
それに、Aはバカじゃないけれど今、俺とのことでいくらか自棄になっているのも確かだった。
「…あのさ、ごめん。本当にめちゃくちゃ申し訳ない気持ちもありがたい気持ちもあるんだけど、その上で、」
「ん？」
「いや、絶対ないだろうけど、お前…、絶対、」
「何？」
「……その、あいつに、何か、」
自分の胸の内をいっぱいに占める心配を、何と言って神宮寺に伝えたらいいか分からなくて電話口で口籠る。
「いや手、出さないから」
「……」
「出せるわけないです」
けれど、言わなくてもそれは伝わったらしく。
至極冷静にそう返された。
俺はとんでもなく失礼なことを言ったけれど、神宮寺の声の調子は怒っているようではなく、ただただ冷静だった。
「………だよな。ごめん」
そりゃそうだ。Aは神宮寺にとっても親戚の子どもみたいな存在のはずだ。幼い頃から知っていて、俺の娘として可愛がってくれていた。
手を出すなんて普通の大人ならば、普通に、無理なことだ。
一度は納得したような気になって、けれど、電話を切った後もどうにも胸のざわめきがおさまらなかった。
心が波立ち騒いで、どうしようもなくて、体は疲れきっているのにベッドに入ったところで少しも眠くなんてならない。
親戚の子どもみたい、でいられるだろうか。
だって、俺が今日見たAのあの泣き顔は、幼い頃のAとはまるでちがったのに。
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小袖(プロフ) - 良すぎてぶるキュンしました😭どの作品もとても読みやすくて、心情や情景の書き方もとても上手でほんとに素敵です！続きが気になります！ (2022年6月29日 17時) (
レス) id: 086580d8cf (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - 更新嬉しいです！新しい岸くんと娘ちゃんの形、ドキドキします！これからも楽しみにしてます。 (2020年11月24日 0時) (レス) id: 13ab7dce5a (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - 更新楽しみにしてました！岸くんの変化にキュンキュンです！何度も何度も読み返したくなる素敵な作品。2人がラブラブになるの楽しみにしてます！ (2020年11月18日 20時) (レス) id: 5ef92e91e3 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 更新ありがとうございます！待ってました！はぁ…すごく嬉しいです。幸せな岸君と娘ちゃんに、嬉しくて、なんだかくすぐったいような…。幸せのお裾分けをいただいています。2人が恋人になる日が待ち遠しいです。 (2020年11月18日 18時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - ついに！ついに岸くんが！！！わぁー、やっとですか！でもそんなに我慢できる！？はやく求めてほしいな…続きも楽しみにしています♪ (2020年9月30日 7時) (レス) id: 400e48a6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年11月11日 19時
