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姉の病気のこと、勉強した。
かかっていたカウンセラーの先生に話を聞きに行って、「今の姉の容姿を褒めるのは得策ではない」と言われた。それよりも人の価値は容姿の美醜に限定されないのだと、その他にも大切なことはいくらでもあって、今の姉だって十分に価値のある存在なのだと、そうしたことを伝える方が重要だとそう教えられた。
けど、何といって言葉にすればいいか分からない。
姉のこと、大切だと思っているけれど。
いてくれるだけで、それでいいって思っているけれど。
姉はバイオリンを弾かなくなったけれど俺は時々ピアノを弾いた。
そうするとたいてい姉は別の部屋からでもふらふらと寄ってきて、その傍で眠るのだ。
「龍斗の音好きよ」
その瞬間だけは姉の安らいだ顔を見ることができた。心地よさそうにしてくれるのが嬉しかった。
何にも言えないけれど、できないけれど、ただ自分の弾くピアノが姉の癒しになればいいと思って。姉の好きな曲ばかりを弾き続けた。
けれどそれで姉の病気が良くなるわけではなかった。
自傷行為は止まなかったし、病院を移っても処方される薬の量が変わるだけだった。
自分のことを「醜い」と卑下して、鏡の前、ほんの数センチの傷跡にいつまでも囚われ続けている姉。
そんな姉を綺麗だと思っていること、それは言わずに、胸の内に留めておいて。
高校に上がってすぐ、姉が死んだ。
薬の過剰摂取だった。
遺書のようなものを残して、そこには家族一人一人に向けたメッセージが書かれていた。
俺に宛てられた言葉。
――嘘つきって言ってごめん。龍斗が言ってくれたこと、気持ち、嬉しかったのに。
もっと、「綺麗だよ」って言えばよかったと、そう思った。
それでもっと傷つけることもあったかもしれない。正解かは分からない。救いは他にあったかもしれないけど、それでも。
俺は心から確かに姉のことを美しいとそう思っていたし、姉だってそれを「嬉しかった」と残していた。世間一般的な正しい病気の対処法なんかに則るよりも、俺は俺の思っている言葉を言えばよかった。
だって姉さんは、綺麗だったんだから。
伝わるまで、信じざるをえなくなるまでちゃんと、たくさん、何度でも言えばよかったんだ。
棺の中に眠る顔を見た。
生前と変わらず姉は美しいままだった。
「綺麗だよ」と、そう言った。
今更言ったって届くはずもなかった。
無意味だ。
今ではもう、全てが無意味だ。
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よぴ(プロフ) - パスワード教えていただきたいです（ ; ; ） (2022年1月17日 19時) (
レス) id: 5c59f9ee59 (このIDを非表示/違反報告)
いち - パスワード教えてください⁉️ (2021年9月28日 13時) (レス) id: 358f9d64ec (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - こむぎさんの作品いつも楽しく読ませていただいています。この作品を最初から読みたいのですがパスワードを教えていただくことはできますか？ (2021年5月5日 2時) (レス) id: 3b72a96203 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - どの作品も大好きです！いつもキュンキュンしながら読ませて頂いています。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 21時) (レス) id: e6fd1d12b5 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - 切なくて切なくて、涙が出てきました。このお話大好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 19時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月21日 14時
