. ページ28
.
わりとしっかりめの口調でお叱りを受けてしまった。
本気で迷惑そうな顔を見せて、それまで以上の距離を空けられる。
「あ、はい、そうですね確かに、ごめんなさい……」
ご尤もだ。浮所くんとのことはきっと、教師と生徒という本来明確な線引きのされるべき関係性を日頃から私が示せていなかったということも原因にある。自分自身が教職員の中では若手でかつ女であるということを私はもっと意識すべきだったし、確かに、軽率な行いは謹むべきだ。
めちゃくちゃ色んなことが手遅れになっている今更ながら、そう思う。
それに、自分からちょっかいかけておいて本当にどうかと思うけれど、那須くんからこうして振り向かれてしまうとその綺麗な顔が苦痛だった。那須くんの方も、私の”いい匂い”に対して同じような種類の嫌悪感を感じているんだろうに。それが分かっていながら。
「調子に乗りました…」
私がしょぼくれた顔をしていたからだろうか。
次に目線を上げたとき、那須くんは困ったような表情をしていた。「いや、すみません」と頭を掻いて言う。
「浮所のことは先生が悪いわけじゃないので、反省というのは正しくないです…」
口にした『反省』という単語が彼の中で引っかかっていたらしい。改めて、真面目だなとしみじみ思う。
「…先生が悪いわけじゃないし悪いのは100パー浮所なんですけど。でもさっき、最後のはちょっと、ちょっとだけ浮所がかわいそうだと思いました」
「……かわいそう？」
かわいそう。
私と浮所くんとのやりとりの中に、那須くんから見て、浮所くんのことをかわいそうだと思った瞬間があったのだ、と。
最後というのは彼から好きだと言われた時にどう思うかと問われて、その質問に対しての答えのことだろうか。「ありがたいと思う」と、そう答えた。
「…浮所の気持ちとか、多分真剣に言ってた言葉とか、何一つ届いてない感じがして」
躊躇いを含んだ声で、考えながら那須くんは言う。
「生徒だから、子どもだからしょうがないのかもしれないですけど。…でも、もうちょっと真に受けてあげてもいいのにって、」
「立ち聞きしておいてすみません」と、それから律儀に頭を下げた。
そうか。そんな風に思われるのか、と思った。
私が浮所くんに向けた返答は、ひどいものだったのか、と。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1909人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よぴ(プロフ) - パスワード教えていただきたいです（ ; ; ） (2022年1月17日 19時) (
レス) id: 5c59f9ee59 (このIDを非表示/違反報告)
いち - パスワード教えてください⁉️ (2021年9月28日 13時) (レス) id: 358f9d64ec (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - こむぎさんの作品いつも楽しく読ませていただいています。この作品を最初から読みたいのですがパスワードを教えていただくことはできますか？ (2021年5月5日 2時) (レス) id: 3b72a96203 (このIDを非表示/違反報告)
りの(プロフ) - どの作品も大好きです！いつもキュンキュンしながら読ませて頂いています。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 21時) (レス) id: e6fd1d12b5 (このIDを非表示/違反報告)
陽依(プロフ) - 切なくて切なくて、涙が出てきました。このお話大好きです。これからも楽しみにしています。 (2020年5月3日 19時) (レス) id: 5f72745e3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月21日 14時
