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「ふざけてない」
それは驚きでも、動揺でも、怒りでもなく。
「ふざけてないよ…」
傷ついた顔をしていた。
涙が一筋頬を伝い落ちる。
俺が呆気にとられている間にAはそのままベッドから降り、部屋を飛び出していった。
Aの部屋の方からバンと大きな音を立ててドアが閉まるのが聞こえ、ハッとする。さっきのがどういう意味の涙か、分からないけれど傷つけたのは間違いなく俺だった。
起き上がり、慌てて追いかけその部屋の前で名前を呼ぶ。返事がない。もう一度呼んでからドアを開ければ、踏み込む前に「こないで」という一言。
「ひどい」
言われた通り、ドアを開けてすぐの入り口付近に立ちそれ以上には近寄らない。Aは頭から布団を被っていて、その中から涙の滲んだ声がする。
確かにひどい。ひどいことをした。とりかえしのつかないことを。
「…優太くんのせいだよ、」
確かに俺のせいだ。何から何まで、100パー、完全に俺が悪い。
「ずっと、抑えてたのに、…隠してきたのに、ひどい」
そうして、被っていた布団を取り払い。
こちらに背を向けたままベッドに座ってそう言った。
話が見えない。
隠してきたって、何を。
Aが振り向く。
赤い目をして、俺を見る。
何かを言おうとしたのに出かけた言葉は声になる前に咽喉の奥に引き返した。
Aのその見たことのない表情に、鋭く胸を貫かれるような心地がしたからだった。
「優太くんが好き」
俺だってAが好きだ。
大好きで、大切だ。
けれどこれは、
「優太くんのことが、男の人として好き」
これは、そうじゃない。
両脚がフローリングの床に凍りついたように、身じろぎもせずに突っ立っていた。
目が覚めてからずっと混乱したままの脳内が、さらにぐちゃぐちゃに掻き乱されて。
「間違いでも何でも…、キスされて嬉しかった」
「……ちょ、待って、」
理解が追いつかない。
訳が分からない。
息を呑み、呆然として、口の中がとにかく乾いた。
「好きだから、嬉しかったの」
知らないAがそこにいた。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (
レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません！更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです！！たまに出てくるじんくんも好きです（笑）もどかしくて、キュンキュンする！続きが楽しみです！ (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です！表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月16日 18時
