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「…それだけ?」



それまで頬を赤らめて魂が抜けたようにぼんやりとしていたAが、目を見開く。



「いや、ごめん…、」
「ごめんじゃなくて、」



眉根が寄る。驚きと動揺はきっと怒りに変わっていた。
馬鹿みたいにごめんとそれだけを繰り返して、その他には返す言葉がなかった。どれほど謝ったって絶対に足りない。けれどそれでもやはりきちんと謝るべきではあって。
とりあえずいつまでも続いている、Aに跨られたまま身動きのとれないこの体勢を何とかしたい。Aも多分なんか、うがいとかした方がいいだろうし、ていうかこのままではいろいろとまずい。俺が。



「ちょ、…っと、退いて、くれませんか」



その頼みに対してAは一言「いや」と即答した。
じっと、目線を真上から落とされる。



「…え?なに、なんで」
「やだ」
「……怒ってる、よな当然。あの、謝って済むことじゃないって分かってるけど、本当に、」



その怒りは尤もだと思って、さらに増している苛立ちも当然のことだと思って。迷いながら発する俺の言葉を途中で遮るように、Aが頬に両手で触れる。触れた掌が熱い。



「もう一回、して」



その体温と対照的に、妙に冷静な声をしてAが言った。
再び世界が止まる。



「…は?」



今、なんと言った?
もう一回って、何を。



「おい、ちょっ…、え、」



こちらの反応も待たずに近づいてくる顔の頬を抑えて止める。
え、なに。なにしてんの。なんだこれ。
A、ショックでおかしくなったのか。
互いの頬に互いの掌で触れている。なんなんだこの状況。俺の手の大きさでは顔の大部分が隠れてしまいそうなA。睨みつけるように見つめる目が据わっていた。



「…、ど、どうした、」
「どうもしない。さっきのキス、もう一回して」
「いやいやいや…、は!?何、ふざけてんの!?」



とんでもないことを言い出すAに焦ってそう言えば、ふと、抑えていた頬が手から離れた。
Aが体を起こす。眉間の皺が解かれ、強張った表情が少しずつ緩んでいく。






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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません!更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです!!たまに出てくるじんくんも好きです(笑)もどかしくて、キュンキュンする!続きが楽しみです! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です!表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こむぎ | 作成日時:2019年7月16日 18時

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