baby I love you

. ページ18

.




一応は夢を売る商売なんだから、あまりにそこからかけ離れた現実の姿を見せるのはルール違反だという意識はある。けれど今回の件に関しては、古くからのファンはこれまで以上にもっと支えたいと言ってくれる人たちばかりだったし、俺のことを知らなかった人たちからは"若いのに苦労人でえらい"みたいな認知の仕方をされたり、育メンアイドルとしての個人仕事をもらったりもした。

よかった、んだと思う。プライベートを切り売りするつもりなんて微塵もなかったし抵抗はあったけれど、でも、俺は俺の夢を叶えるために手段を選べない。だって、Aと暮らしながら絶対に、確実に幸せにならなければならないのだ。そういう約束になっているんだから。



それはそれとして問題はメンバーだった。とりわけ岩橋と神宮寺は怒っていた。迷惑をかけたことに対してじゃない。これまでずっとそれを秘密にしていたことに対してだった。岩橋からは信頼がなかったのかと問い詰められたし、神宮寺からは頼らなかったことを責められた。二人ともいいやつだと思う。本当に。



「娘ちゃんに会わせてくれたら許す」



そういうわけで、一ヶ月間続いた舞台の千秋楽翌日、６人揃ってのオフに、全員が我が家に集まることになった。







.






「かっっっわいい〜！！！」



玄関先に響き渡る男５人分の声。普通にご近所迷惑なので慌ててドアを閉めた。迎えに出てきたAを見た瞬間に、全員が目を輝かす。おうおうそうだろうとも。可愛いに決まっている。当たり前だ。



「Aちゃん！かわいい！！」
「わーい初めまして〜」
「ちっこいな！何歳やっけ？」
「すごいかわいい！岸くんに似てない！よかった！」
「本当、可愛いね」



自分に向かって一斉に放たれる言葉の数々を、頭の中で処理できずにAは目を見開いて固まっていた。一つ失礼なものがあった気がするけどAの前なので聞き流す。似ているところもあると思う。多分。小さめの耳とか。



「は、はじめ、まして」



いつもの３分の１ほどの大きさの声だった。人見知りとかするタイプだったのか。これまであまり一度に大勢の大人に会わせることがなかったからか、知らなかった。まぁでもそうか。Aにとってのこいつらは"テレビの中の人"なのだから、萎縮するのも無理ないのかもしれない。





.

.→←6人 篇 −22歳と11歳−

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す