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「もうつくらなくてだいじょうぶです。じぶんで、できます」
ある日の夕方、いつものようにキッチンに立とうとした俺にAが言った。もしかして俺のつくる飯がまずかったんだろうか、とそこで気づく。これまで一人暮らしをしている間は外食かコンビニ弁当が中心で、自炊なんてほとんどしたことがなかった。けれど育ちざかりの子どもにそれではよくないだろうと思って、俺なりに勉強しながら頑張ったつもりではあった。その出来栄えは特別うまくはないものの食えない程ではない、くらいのつもりだったのに、そんなに嫌だったのか。それならまぁ、しょうがないかもしれない。
そうは言っても、自分でできるって一体どうするつもりだろうと、その行く先を黙って見守っていた。米を取り出して、研いで、炊飯器にセットするところまで一人でやってのける。姉ちゃんに習っていたんだろうか。けれどそれからおかずを用意する気配はなく、結局ご飯が炊きあがってから食べていたのは納豆ごはんだけだった。いくら俺の飯がまずくっても、毎日納豆ごはんというわけにもいかない。明日からお惣菜を買ってくるとかにした方がいいんだろうか、なんてあれこれ考えていたその時、キッチンから大きな音がした。ガラスの割れる音。行ってみれば、流しの辺り一辺に割れたコップの破片が広がっていた。
「ごめんなさ、」
「あー…いいよ。危ないから触んな」
自分で片付けようとしていたAをすぐに止める。スクールバッグの中からいらないプリントをとってきて破片をそこに拾い集めながら、思わず溜息が零れた。
正直、何というか、ちょっと堪える。小学生の子どもを引き受けて育てるのは並大抵の大変さではないということだって、分かっていたつもりだ。とりわけAは置かれた状況が複雑で、簡単には心を開いてもらえないだろうということも覚悟していたつもりだ。
でも、俺だって、今日も学校帰りに雑誌の撮影があったりして、少なからず疲れている。
「手切ってない？見せてみ」
その手に触れようとしたとき、思いきり振り払われた。さすがに腹が立った。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (
レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません！更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです！！たまに出てくるじんくんも好きです（笑）もどかしくて、キュンキュンする！続きが楽しみです！ (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です！表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月16日 18時
