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「…ないなぁ」
新刊コーナーに行ってみるけど、見当たらない。
作家の個人名で分けられた棚にも置いていないようだ。
諦めて、参考書でも買って帰ろうか、と英語の長文読解の問題集をレジに持って行った。
「972円です」
この店に来る理由が、居心地の良さと、もう一つある。
…店員のお姉さんが、
ものすごく、
きれい。
顔立ちは美人というよりも可愛らしい感じだが、真っ白な肌とさらさらで色素の薄い髪と、涼やかな声。
周りにお花でも咲いているような優しい空気を纏っているのに、存在が透き通るようにどこか儚げで消えてしまいそうで、語彙力に乏しい自分が一言で言うと、「きれい」だ。
財布からお金を取り出して支払うまでの合間、一瞬の隙に何度か、お姉さんを見る。
あ、やば。
目が合ってしまった。
「…ぁ、スンマセン」
「…？」
「……」
気まずい。
「あ！」
「…へ？」
「あの、ちょっと待っててください！」
突如、お姉さんがレジを離れて走って行ってしまった。
えぇ、何やろ。
変な高校生にじろじろやらしい目で見られるって店長に告げ口されるんかな…？
嘘やん、そんなつもりでもなかったのに…！
お金置いて逃げようかな…。
逡巡している間に、少し息を上げて戻ってきたお姉さんの手には、俺の欲しかった新刊があった。
「これ、新しいの！今日届いたんですけど、表にはまだ並べてなかったので」
驚いた。
ここでこの作家の小説を買ったのは2回だけだったのに。
自分の好みを、知ってくれてたのか？
この、きれいな人が。
「あれ。違いましたかね…？」
「あ、や、」
「ごめんなさい。何度かこの作者の買われてあったから、さっきも新刊探されてたのかなって」
間違いだったかもと、心配そうで、申し訳なさ気な様子のお姉さん。
合ってる。
合ってます！
合ってるんだけど、ただ自分の存在が認識されていたことが、嬉しいのに、恥ずかしくて、自分を覗き込むその大きな目をまともに見ることができない。
思わず下を向く。
きっと今、顔がめちゃくちゃに赤い。
「や、あの…、これです」
「あ、本当？よかったです」
「…スンマセン、」
嬉しい。
嬉しいけど、恥ずかしい。
お釣りを受け取る自分の手が異様に熱い気がして。
それを悟られないかが不安で。
笑顔のお姉さんにとうとう目も合わせられないまま商品袋を受け取ると、逃げるように走って帰ってしまった。
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rin(プロフ) - こっそりTwitterもフォローさせてもらっており、お話を楽しませてもらっております。いつもありがとうございます。 (2018年11月27日 22時) (
レス) id: 33ae3a68db (このIDを非表示/違反報告)
rin(プロフ) - こんにちは。初めてコメントさせていただきます。斜陽を読み返してこれで4度目くらいになります。初めてお話を目にしたときの衝撃はさながら、いつお読みしても胸を熱くさせ、心を揺さぶる、素敵なお話だなあと思いました。言葉選びや描写がとても好きです。 (2018年11月27日 22時) (レス) id: 33ae3a68db (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - おりかさん» 最後につながるつもりで書いてたのしっかりバレててお恥ずかしいですが、拾って下さり嬉しいです！たくさん感想下さり、本当に励みになっていました！最後までお付き合い頂き、ありがとうございました〜！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
おりか(プロフ) - こむぎさん» 完結おめでとうございます。王子様のキスで魔法が解けなかったと思い込んだ紫耀くんのシーンで号泣し、ラストは王子様になれるから泣くな！これは伏線だ！と言い聞かせてた頃が懐かしいです。ニヤニヤしながら泣きました。ロマンチック紫耀くんありがとうございます！ (2018年2月6日 4時) (レス) id: 4751ebaf72 (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - おりかさん» えー控えないでください〜！毎回嬉しくてにまにましてます！作者としてもようやく二人の関係を進展をさせるので少しどきどきしながらアップしたのですが、反応いただけてとっても嬉しかったです！ムズキュンつくれてたらいいなぁ…引き続きよろしくおねがいします〜！ (2017年11月3日 20時) (レス) id: 51c991b273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2017年3月20日 6時
