8 ページ14
「中也、…」
喉から掠れた、情けない声が漏れる。
取り繕うのは、得意な筈だ。でも今は、取り繕う体力がまるで無い。
「何してるの。そんなとこで突っ立って」
中也は、扉からもう少し離れた扉の暗闇で、ただ黙って立っていた。真っ暗の中で、中也の蒼い双眸が、鋭く光る。
かつり、
中也が一歩前に進んだことで聞こえた冷たい靴音。中也は、依然として荘厳とすら言える表情を携えて、部屋を照らす薄ぼんやりとした照明の中に歩みを進めた。
―――右手には、ナイフが。
ぬらぬらと光る其れは、確かに殺気を放っている。
嗚呼、成る程、
「アタシを殺しに来たの?」
応答は無い。無言は肯定ともいう。
つまり、そうなのね。私の命を奪いに来たのね。いいわ。ならば、...
アタシは中也にふらふらと歩み寄って、首に腕を回した。其の逞しい肩に顔を埋めて、アタシはちいさくわらった。
「貴方のやろうとしてることを、して頂戴」
刹那、腹部には激痛が走る。鋭利な金属器が、不器用に自分の肉を少しずつ少しずつ抉り、掘り進めていく。
その度に、身体中の神経が悲鳴をあげて、代弁者である口から小さな苦悶の声が漏れる。
中也のシャツを強く握り締め、出来るだけ体制を保とうとするも、身体を犯す痛みと異物感は、私が立ったままでいることを許さない。
嗚呼、酷い人。直ぐに、私を殺すつもりなんてないのね。
苦しんで逝け、って事なのね。
いい、いいわ。構わないわ。
だから、
44人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
(=^・^=) - 芥川さんが好き、愛してるのに、私は中原中也…。芥川龍之介さんの性格が大好きだ! (2020年7月17日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 受けて頂き、ありがとうございます!いつになっても、全然大丈夫ですので、よろしくお願いします! (2019年8月22日 17時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
蓮ノ花(プロフ) - 月華さん» 分かりました!更新につきましては、大変ゆっくりだと思うので、ご了承ください<(_ _)> (2019年8月22日 17時) (レス) id: fd07e1b99b (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - 蓮ノ花さん» ありがとうございます!では「一般人で、芥川さんと恋仲の夢主が敵組織に誘拐され、芥川さんが救出に行くが、夢主は殺 され、しかも解体されていた」というお話をお願いしたいのですが、大丈夫でしょうか? (2019年8月22日 13時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
蓮ノ花(プロフ) - 月華さん» どうぞ〜!ただ私なかなかの遅筆なもので、消化に時間がかかるかもしれませんが… (2019年8月22日 12時) (レス) id: fd07e1b99b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月23日 22時