あのこはぼくらの ページ6
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「男の嫉妬は怖いねえ。ね、柾哉」
「…………なに、蓮くん」
おー、こわいこわい。完全に面白がってこちらを見やってくる。先輩といえど旧知の仲の彼は、唇の両端を楽しそうに吊り上げた。
「Aちゃんかわいいねえ、うちに来んかなー」
「…………あげないよ」
「蓮さん、やってー」
「……ふーん」
ご機嫌に目を細めて笑っている視線を辿る。その先にはうちの大事な紅一点がちらちら見えていた。にぎやかな輪の中で、やわらかくAに向けて笑いかけている洸人は護るように隣にいるし、たじは自分たち以外からAの姿を隠すようにこちらに背を向けて立っていた。
蓮くんの言う『男の嫉妬』丸出しの集団だった。
JO1さんのところにAが捕まって、いつまでも切り上げられない話に最初に痺れを切らしたのはフェンファンだった。さすがに長くない？ と不機嫌を隠す気もなく小さく呟いた一言がきっかけになり、ドミノが連動するように他のメンバーにも苛立ちが伝播した。彼女のことになると俺も大概の自覚がある。が、他のメンバーも似たようなもので、それぞれ程度に差はあれどある種の独占欲のようなものを持っている(肝心のAはそれに気づいているかは定かではない)。
「俺ちょっとAちゃんとこ行ってくるわ」
焦れたらしい迅が動くのに一緒についていく。自分も待ちの姿勢でいるのにだいぶ限界が来ていた。
「——A」
不自然にならない程度の笑みを貼り付けて彼女を呼び寄せると、入れ替わりで迅が談笑の輪の中に入っていった。度胸の良さと人当たりの良さの両方を持ち合わせた『世界一』の彼の行動はスマートだった。
とはいえ、こちらが隠す気もなかったのもあるけれど、俺たちが牽制に来たことはこれ以上もなくわかりやすかっただろう。おや、と面白がる空気が年長メンバーたちから感じられたが無視を決め込む。彼女をメンバーの元に誘導して俺も戻ろうというところ、JO1さんの輪をふらりと離れてきた蓮くんに捕まった。そして冒頭の会話となったわけだ。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
