ぼくとあのこのMATCH UPバレンタイン ページ43
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「いやだ！ わたしを！ 修羅場に！！ 巻き込むんじゃ、……ないッッッ！！！」
INIフォルダにおける2月の恒例行事、バレンタイン企画。そこには我らが紅一点の悲痛な叫びが響いていた。高々と掲げられた10枚のカードを前にがっくりと肩を落としている中、男たちは口々に宣言する。
「ちょっとMATCH UP！！！」
Aちゃんからのバレンタインチョコは、毎回企画におけるメインイベント扱いだ。もれなく今年も最後にその順番が回ってきた。
「わたしは迅に！ かわいい弟に！！ あげたいんだよ！ 貰えなかったから……せめて渡すことは許して！！！」
「Aちゃーん♡ さっすが！！ お・れ・の！ お姉ちゃん♡」
「じーん♡」
Aちゃんの本命は毎年ブレない。迅もその愛を確信していて余裕の表情を見せている。それが俺たちに余計に火をつけた。
「なんやあの顔！ 腹立つ〜」
横で威尊が笑っているが目はガチだ(俺も似たようなもんだろうけど)。気づいて迅は迅でこちらに向けてさらに煽るような仕草をしてくる。
「おまえ迅！ 覚悟しとけよ！」
「たくみんもたけちーもみんな返り討ちにして、俺の！ 俺のための！ Aちゃんのチョコを守るもんねー」
既に戦いの火蓋は落ちている。
一方こちらはこちらで戦っていた。
「なんなの！？ なんでみんなして……！」
MATCH UPカード3回目ってなによ！！！ 何人かを指差してAちゃんは膝から崩れ落ちている。しかし顔を上げた彼女は諦めなかった。強い。
「ねえ柾哉くん。あらためて！ ルール確認です。カードはみんな何枚ずつ持っていますか？」
「2枚です」
「ということは使用可能回数は？」
「2回ですね」
ねえ、聞いてんの？ Aちゃんが3回目の略奪のため張り切って出てきたメンバーに向けて視線を投げた時だった。
「だけどAのチョコはメインイベントですから！ 今までのはノーカンです！！」
まさかのリーダー(この場合ルールブックが正しいかもしれない)の宣告に呆然としている。
「うそぉ……」
「嘘じゃないよ、A」
「なんで、柾哉くん……っていうかなんでそんなニコニコしてるの……？」
「それじゃ、奪うぞー！」
拳を突き上げているルールブックが一番張り切っている。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
