. ページ40
.
雄大とひろくんのクライミング勝負が終わった時だった。
「……なんかやたらすごい声してんね」
「あっち賑やかなメンバー多いからね」
「うるさいの間違いじゃなくて？」
ひろくんは安全のために付けていた諸々を外しながら、さりげなく辛辣なことを言っている。肩を竦めて言及を避ける。
「そんなに盛り上がるのって何やってるんだろう？」
「なんだろ？ そうじゃなくてもゲラがいるしなあ」
またタイミングよく笑い声やらが聞こえてきて、余程面白いことをしているのかもしれない。
もう一つのチームが何をしてきたかを聞いて、そりゃ汗だくにもなるよなと納得、次に思ったのはこっちのチームでよかった、だった。
「あっち球技やってたから？」
ひそひそとフェンファンが囁いてくる。
「えっ、何でわかった？」
「ちっちゃく声出てた」
「うそ……。でもさ、トランポリンやりながらドッジボールとかさ、わたしやったらどうなると思う？」
「…………」
「黙らないで？」
「こっちのチームで良かったね」
仏様も斯くや、といった優しい微笑みを目の前の彼は浮かべている。口をへの字に曲げて見せる。ますます笑みを深めているフェンファンに後光が差すのは時間の問題かもしれない。しょうもないことを考えていると、
「ほらほら〜ふたりで仲良くしてないで、こっち来てくださいよ」
京ちゃんに見つかってしまった。
にんげんタワーやるぞ！ とさっそく年齢順に並んでみる。
「向こうはおじさんゾーンで……」
言った理人とパチリと目が合う。瞬間、しまった！ とその顔に浮かぶので思わず笑ってしまう。大人びた見た目に反して正直さが子供みたいだ。
「Aちゃんはお姉さん！！！」
「え、何も言ってないよ。おじさんで大丈夫だよ」
「Aちゃん女の子やけ、おじさんにはなれんし」
「というわけで、こちら、おじさんとおばさんのゾーンですよ。ねーA。俺たち仲間」
柾哉くんは楽しそうにまぜっ返している。
「おじさんとお姉さんのゾーン！」
一回目のチャレンジがあまりにあっけなく終わり、二回目。
「いつもありがとー！！」
日々の感謝を述べて急いでポーズを決める時に気づく。あれ、これ結構開脚しなきゃ後のメンバーがきついかもしれない(本日二回目の『もう少し手脚が長ければ』案件)。ペッタリと180°両脚を開いて胸も頭も床につける。すげー！ 身体柔らか！ の声の中、先に決めたフェンファンの土台のうえ、画面の中に自分が落ちてくる。なかなかの安定感。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
