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「あ、Aちゃん起きてる。もう大丈夫なんですか？」
「京ちゃん、ご心配おかけしました。お薬効いてきたー」
「よかったー」
ドアが開いて、戻ってきたのは京介だった。
「京ちゃんまじでありがとね。頭痛薬」
「どういたしまして」
「カバンの中身入れ替えた時、うっかりお薬入ったポーチ忘れてくるとか……。やらかしたよね……」
「Aうっかり珍しいよね」
「そうかな？ とにかく今回は京ちゃん様様だよ」
帰ったらまずポーチをカバンに入れる、とげっそり呟いている。
「それはそうと、柾哉くんはいつからAちゃんの肩揉んでるの？ マッサージ屋さんですか？」
「いや、やってたらなんか楽そうにしてるからさあ。止め時がわからんくなった」
「ねー京ちゃん。柾哉くん肩揉むのうまいよ」
「あ、そうなんだ……じゃなくて」
「手があったかくて気持ちいいんだよねー」
「時々してあげよっか」
「うーん、お願いするのもいいかもなあ」
きっとそのお願いはされないんだろうと内心で思う。Aのお願い事ならこちらは全然歓迎なんだけれども。
「……柾哉くんありがと。おかげで痛いの楽になりました」
ふー、満足げな溜息がひとつ。
「気持ちよかった？」
「うん。すごく」
「そっかー」
手を離すのが何となしに寂しくて、最後に無防備に晒されていたうなじをそっと指先で撫でてみる。
「ヒ……ッ！」
首の後ろをガードするように手で押さえながら睨まれても全然怖くない。むしろ少し目尻に涙(おそらく生理的なもの)がを浮かべていてかわいいと感じていることに少しの嗜虐心を自覚して、これはよくなかったと密かに反省する。
「まさやくんのばか、」
「あれ？ 首弱い？」
「知らない」
口をへの字に曲げている。ごめんてー、許して？ とあざとい笑顔を作って手を合わせてみせると、キュッと鼻を摘まれた。
「いひゃい」
反撃する元気は出たようだ。
「……俺はなにを見せられてるんですかね？ バカップルのいちゃいちゃ？」
「だって！」
「なんで柾哉くんは鼻摘まれてるのに嬉しそうなんですか？」
京介はあからさまに呆れた顔をしていた。
「もうやらない？」
「ひゃい」
「じゃあ許す」
Aがスタッフさんに呼ばれて行ってしまうと、京介から溜息が溢れた。
「完全にバカップルでしたよ」
「そお？」
「……満更でもない顔すんな」
「それは無理よ」
隙のないあのこが俺の前では無防備な部分を見せてくれる、その信頼がうれしい。ニヤつく頬を押さえても、なかなか戻せそうない。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
