あざとくなくて何が悪いの？ ページ35
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VTRを眺めながら隣に座るAは眉を顰めている。
「いや、違う世界のひとの話だわ……」
「すごい。あざといのお手本ってこんな感じかな」
「うっそ」
「えええ……？」
手元のボタンを連打しつつ小さく呟く姿に俺はおかしくなって笑うのを堪えるのに必死である。Aは俺たちから見れば無自覚のあざといを振り撒いているけど、ファンサを除くと彼女自身が意識してあざといことをやることはほとんどないタイプだ(照れ屋だからそういうのは苦手なのは見ていてよくわかる)。
あざとい女性の行動の再現を見終わって、困惑と不可解の表情を浮かべていたAにMCのお二方はびっくりしていた。
「Aちゃんすごい顔してる！」
「アイドル！ 現役アイドルしっかりして！！」
下がり切った眉を見た元アイドルの先輩に笑われている。
「いや……こうやって好意を伝えるのに一生懸命なの可愛いなって思うんですけど。なんかもう、ほんと……すごいなって」
彼女は困り果てて小首を傾げている。俺も迅も匠海ももう笑わずにはいられなかった。
「Aちゃんは意識的にこういうのできないタイプだもんね」
「そう……。迅、というかさすがメンバーはよく分かってくれてます」
苦笑いをして頷いている。
「あざとさとか、可愛げとか、そういったものが不足しているんですよね」
「うちのお姉さんシャイなんで。僕らファンサービスとして愛嬌やったりしますけど、Aちゃん可愛いこととかあざといことやった後は毎回ほっぺた真っ赤になってて。そういうとこかわええですよね。ね、たじくん？」
俺は頷いて同意を示したけれど、匠海の言葉はAに追い打ちをかけているようで彼女の頬はみるみる紅く染まっていく。
「いや、わたし言わないし言えないよ！ みたいなのもあるんですよ。ふと我に返ると恥ずかしいというか照れてしまって」
「俯瞰で自分を見た時ね」
俺の、わかるわー、という呟きにぶんぶん頷いているのだった。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
