きみが思うよりもぼくらは ページ32
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「……なんこれ」
小さく顰められた雄大の声。わーお偶然、俺も同じことを思ってた！ なにこれどういうこと？ ……という心の声は聞こえまい。目の前には文庫本片手にソファに陣取るAちゃん。と、その膝の上に頭を載せ占拠する洸人。本を持たない方の手で髪を撫でられながらすやすやと眠っている。ドアのところで立ち尽くしている俺たちに気づいたAちゃんは本を閉じて、しーっ、とやわらかな微笑みを浮かべた。
「いやほんま、なにこれ。うちの夫婦ケミはなにしてんの？」
言いながら雄大がソファの方へ動き出したので、俺もそれに倣う。いやほんと、まじでなんなの、これ。
「ひろくんやっと寝たとこだから。雄大、理人。静かにしててね」
並んでしゃがみ込み、洸人の顔を覗き込む。
「ねーAちゃん。なんでこんなことなってんの？」
「なに？ 理人」
「このお兄さんはなんでAちゃんの膝枕を堪能してんの？ ってことよ。しかも爆睡しとるし。なんで？ まじで」
「ほんまよ。なにをどうすればAちゃんに膝枕してもらえるん？ 西くん何したん？」
Aちゃんは困ったように笑っている。
「雄大まで……。いやね、ひろくんここのところ睡眠削っていろいろ制作してるでしょ？ だから、少し時間も空くし身体休めるためにも寝なよって言ったの」
Aちゃんの言うにはこうだ。
寝ろ、と言ったところで洸人は作業も途中だし時間も無いし……とずいぶん渋ったらしい。そこで、
「Aが膝枕でもしてくれたら寝られるかもしれないなー」
などと曰った(なんてやつだ！)。きっと笑って却下されると踏んだのだろう。しかしその見通しとAちゃんのお返事は違った。
「寝るって言うなら膝枕でも何でもしますよ、はいどーぞ」
ポンポン、形良いその脚を手で叩いて横になるよう示すと、言い出した手前引くに引けなくなった洸人は遠慮がちに頭を載せてきたのだという。始めはそのままポツポツと制作状況についてなんかを話していたようだが、髪を撫でる手が気持ちよかったのか寝入ってしまったのだった。
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
