きみが選ばなかった未来のはなし ページ30
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「最近その曲好きだねえ」
俺が話しかけてはじめて、Aは自分が鼻歌を歌っていたと認識したらしい。
「え、わたし歌ってた？」
「うん。ばっちり」
後輩になる女の子たちのオーディションテーマ曲は近頃のお気に入りみたいで、ふとした時に口ずさんでいる。
「意識してなかったなー」
「そうなんだ」
「あ、もしかしてうるさかった？ ごめんねフェンファン」
「ううん、平気。Aの歌好きだし」
女の子の曲を歌っている彼女は新鮮だし、無意識なのも俺たちの前でそれだけリラックスしているということなんだろうと思ったら、感想としてはかわいいしか出てこない。
「この曲かわいいよね」
「ね」
「歌ってるみんなピカピカしてるし」
「キラキラじゃなくて？」
「そう、ピカピカ。なんだろう、フレッシュさかな。若さと勢い？」
なりたてアイドルをピカピカと評する、Aの感性が俺は好きだ。そんな彼女といえば、いや〜、かわいいよね！ ピカピカ！！ 手放しでその誕生を喜んでいる。
「女の子の後輩、できるのうれしい？」
「うーん……女の子だから、っていうのはあんまりないかなあ。ただ、」
「ただ？」
「どんな子たちなのかなー、とか、仲良くしてくれるかなーとか……会えるの楽しみにしてる」
「そっかあ」
ふんふんと鼻歌をまた再開、今度は俺に見せるように踊ってくれていた。
「フリも入ってるの？」
「だってかわいかったから……」
踊りたくなっちゃったよねとウィンクをして見せたその姿は、完全にキラッキラのアイドルである。
「まあ女の子の後輩って言ってもさ、そこそこ歳も違うし、会うの考えるとちょっとドキドキしちゃうよね」
「そういうものかな」
「そういうものなんだよ、フェンファンくん」
「俺たちといくつくらい違うんだっけ」
「年少組はまだ高校生とかでしょ？ 迅よりも全然年下」
「確かにそう考えると結構離れてるかもね」
「ね、高校生だった頃なんてさ、ずいぶん……」
「A、それ以上言っちゃダメ。俺たちが傷つく」
「それもそうね……」
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作者名：co | 作成日時：2023年11月28日 1時
